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病院・施設の費用清算を委任する方法|死後事務委任契約の活用・手続き・預託金の目安を徹底解説【2026年版】

投稿日/2026.04.09 更新日/2026.04.07

カテゴリー:死後事務委任

「自分が亡くなった後、入院費や施設の利用料は誰が払ってくれるのだろう……」。こうした不安を抱えている方は少なくありません。特に、おひとりさまや身寄りの少ない方にとっては切実な問題です。実は、死後事務委任契約を結んでおけば、費用清算を信頼できる第三者に任せることができます。本記事では、死亡後に発生する費用清算の全体像から、委任の具体的な方法、預託金の目安、トラブル防止策までをわかりやすく解説します。


死亡後の入院費・施設利用料は誰が支払うのか

ご本人が亡くなった後、未払いの入院費や施設利用料は「なくなる」わけではありません。法律上、支払い義務を負う方が決まっています。まずは、誰に支払い義務があるのかを整理しましょう。

相続人の支払い義務

民法896条により、相続人は被相続人(亡くなった方)の一切の権利義務を承継します。つまり、未払いの入院費や施設利用料も相続人が支払う義務を負います。相続人が複数いる場合は、法定相続分に応じて分担するのが原則です。

連帯保証人の支払い義務

入院や施設入居の際に連帯保証人になっている方は、本人が亡くなった後も支払い義務を負います。連帯保証人には「催告の抗弁権」や「検索の抗弁権」がありません(民法454条)。病院や施設から直接請求を受けた場合、「まず相続人に請求してください」とは言えないのです。

また、重要な点として、相続放棄をしても連帯保証人としての義務は消滅しません。保証債務は相続とは別の契約に基づくものだからです。

配偶者の支払い義務

民法761条では、日常家事に関する債務について夫婦の連帯責任を定めています。入院費や介護施設の利用料は日常家事債務に該当する可能性が高く、配偶者が連帯して支払い義務を負うことがあります。

身元保証人の責任範囲

身元保証人の責任範囲は、契約内容によって異なります。2020年4月の民法改正以降は、保証契約に極度額(上限額)の定めがなければ無効となります。身元保証人になっている方は、契約書で責任の範囲を確認しておくことが大切です。


死後事務委任契約で費用清算を委任する方法

身寄りのない方や、相続人に負担をかけたくない方にとって心強い仕組みが「死後事務委任契約」です。生前に信頼できる第三者と契約を結び、死後の各種手続きを任せることができます。

死後事務委任契約の法的根拠

死後事務委任契約は、民法643条(委任)および656条(準委任)を根拠としています。通常、委任契約は本人の死亡により終了しますが、最高裁平成4年9月22日判決により、「委任者の死亡後も契約を存続させる合意」は有効と認められています。この判決が、死後事務委任契約の法的な支えとなっています。

委任できる費用清算の具体的内容

死後事務委任契約では、以下のような費用清算を委任することができます。

  • 入院費・治療費の精算
  • 介護施設の利用料・退去費用の精算
  • 高額療養費の還付申請(相続人として2年以内に申請可能)
  • 公共料金(電気・ガス・水道)の最終精算と解約
  • 保険料(国民健康保険・介護保険)の精算
  • クレジットカードの解約と残債精算
  • 携帯電話・インターネットの解約
  • 各種サブスクリプションサービスの解約

これらの手続きを一つひとつ自分の代わりに行ってくれる方がいるというのは、大きな安心につながります。


死亡後に必要な費用清算の一覧と届出期限

死亡後にはさまざまな費用清算や届出が必要になります。期限が決まっているものも多いため、全体像を把握しておくことが重要です。以下の表で一覧にまとめました。

項目 届出・精算先 期限
死亡届 市区町村役場 7日以内
厚生年金の受給停止届 年金事務所 10日以内
国民年金の受給停止届 市区町村役場・年金事務所 14日以内
国民健康保険の資格喪失届 市区町村役場 14日以内
介護保険の資格喪失届 市区町村役場 14日以内
後期高齢者医療の届出 市区町村役場 14日以内
入院費・治療費の精算 医療機関 請求後すみやかに
施設利用料の精算 介護施設 退去後すみやかに
公共料金の精算・解約 各事業者 すみやかに
クレジットカードの解約 カード会社 すみやかに
携帯電話の解約 通信会社 すみやかに
サブスクリプションの解約 各サービス提供元 すみやかに
準確定申告 税務署 4ヶ月以内
相続放棄の申述 家庭裁判所 3ヶ月以内
相続税の申告・納付 税務署 10ヶ月以内
高額療養費の還付申請 健康保険組合等 2年以内

期限を過ぎてしまうと、還付金を受け取れなくなったり、延滞金が発生したりするケースがあります。特に年金の届出や準確定申告は期限が厳しいため、注意が必要です。

死亡後に必要な費用清算の書類を整理するイラスト

銀行口座凍結と預貯金の仮払い制度

亡くなった方の銀行口座は、金融機関が死亡の事実を知った時点で凍結されます。凍結されると、預金の引き出しや振り込みができなくなり、未払い費用の支払いに困ることがあります。

口座凍結の仕組み

口座が凍結されるのは、遺産分割が確定する前に一部の相続人が勝手に預金を引き出すことを防ぐためです。原則として、遺産分割協議が完了するか、全相続人の同意がなければ預金を引き出すことはできません。

預貯金の仮払い制度

2019年7月に施行された改正民法(909条の2)により、遺産分割前でも一定額の預貯金を引き出せる「仮払い制度」が設けられました。

引き出せる金額の上限は次のとおりです。

  • 各預貯金残高 × 1/3 × 法定相続分
  • ただし、1つの金融機関あたり上限150万円

たとえば、預貯金残高が600万円で法定相続分が1/2の場合、600万円×1/3×1/2=100万円まで引き出すことができます。

家庭裁判所の仮分割仮処分

仮払い制度の上限を超える金額が必要な場合は、家庭裁判所に「仮分割の仮処分」を申し立てることもできます(家事事件手続法200条3項)。こちらには金額の上限はありませんが、裁判所の審査が必要となるため、一定の時間がかかります。


介護施設の入居一時金・敷金の返還

有料老人ホームなどに入居する際に支払った入居一時金は、退去時に未償却分が返還されます。しかし、返還の仕組みはやや複雑ですので、基本的なルールを知っておきましょう。

初期償却と均等償却の仕組み

入居一時金は通常、「初期償却」と「均等償却」の2段階で償却されます。初期償却とは、入居時に一定割合がすぐに償却される部分です。残りの金額は、想定入居期間にわたって均等に償却されます。退去時には、まだ償却されていない「未償却残高」が返還されます。

90日以内の短期解約特例

老人福祉法29条8項により、入居から90日以内に退去(死亡退去を含む)した場合は、入居一時金の全額が返還されることが定められています。この短期解約特例は、入居者保護のための重要なルールです。

保全措置の義務化

2021年4月以降に届出された有料老人ホームでは、入居一時金について最大500万円までの保全措置が義務化されています。万が一、施設が経営破綻した場合でも、500万円までは保全されるため、一定の安心があります。

返還金の受け取りまでの期間は、退去後おおむね30日から90日程度です。契約書に返還時期が記載されているため、事前に確認しておくことをおすすめします。

介護施設の受付で費用精算の手続きをするイラスト

費用清算のトラブル事例と防止策

死後の費用清算では、思わぬトラブルが発生することがあります。よくある事例と防止策を知っておくことで、リスクを減らすことができます。

トラブル事例1:相続人間の争い

「誰が入院費を立て替えるのか」「立て替えた分をどう精算するのか」で相続人同士が対立するケースがあります。遺産分割が長引くと、病院や施設への支払いも遅れてしまいます。

トラブル事例2:保証人への過大請求

身元保証人に対して、契約範囲を超えた費用を請求されるケースもあります。契約書に極度額や保証範囲が明記されていない場合、トラブルに発展しやすくなります。

トラブル事例3:遺産の使い込み疑惑

相続人の一人が費用清算のために故人の財産を使った際、他の相続人から「使い込みではないか」と疑われるケースがあります。領収書や明細をきちんと保管しておくことが大切です。

相続放棄と費用支払いの関係

特に注意していただきたいのが、相続放棄を検討している場合です。故人の遺産から入院費などを支払ってしまうと、「単純承認」とみなされ、相続放棄ができなくなるおそれがあります。相続放棄を考えている方は、安易に故人の財産から費用を支払わず、まず弁護士や司法書士に相談しましょう。


生前にできる5つの備え

死後の費用清算で周囲に迷惑をかけないためには、元気なうちに準備を進めておくことが何よりも大切です。ここでは、今からできる5つの備えをご紹介します。

1. 死後事務委任契約の締結

信頼できる第三者(専門事業者や弁護士・司法書士など)と死後事務委任契約を結びましょう。費用清算だけでなく、葬儀の手配や各種届出なども含めて包括的に委任することができます。公正証書で作成しておくと、より確実です。

2. 預託金の準備(100〜200万円が目安)

死後事務を円滑に進めるためには、あらかじめ費用を預けておく「預託金」の準備が欠かせません。一般的な目安は100万円から200万円です。最低限であれば70万円から100万円でも対応可能な場合があります。

参考までに、死後事務の個別費用の例を挙げると、病院への駆けつけ対応が約8.8万円、喪主代行が約7.7万円、納骨が約11万円などとなっています。

3. 財産目録の作成

預貯金、不動産、保険、負債などの財産情報を一覧にまとめておきましょう。どの金融機関にいくらの預貯金があるか、どのような保険に加入しているかが一目でわかれば、死後の手続きがスムーズに進みます。

4. エンディングノートの記入

財産情報に加えて、各種サービスの契約先や連絡先、支払い方法なども記録しておきましょう。クレジットカードの番号やサブスクリプションの一覧など、日常生活で利用しているサービスを整理しておくと、解約手続きが格段に楽になります。

5. 公正証書遺言の作成

遺言書を公正証書で作成しておくことで、遺産分割の争いを防ぎ、費用清算に必要な資金を確保しやすくなります。死後事務委任契約と併せて作成しておくと、より万全な備えになります。

生前の費用清算準備をする高齢者のイラスト

よくある質問(FAQ)

Q. 相続放棄しても入院費は払わないといけない?

相続放棄をすれば、相続人としての入院費の支払い義務はなくなります。ただし、連帯保証人として契約している場合は、保証債務は相続とは別の契約ですので、支払い義務が残ります。配偶者の場合も、日常家事債務の連帯責任(民法761条)により支払い義務が生じる可能性があります。

Q. 預託金はいくら準備すべき?

一般的には100万円から200万円が目安とされています。委任する事務の範囲や地域によって異なりますので、契約先の事業者に見積もりを依頼し、具体的な金額を確認することをおすすめします。最低限の備えとしては70万円から100万円程度でも対応可能なケースがあります。

Q. 高額療養費の還付は死後でも申請できる?

はい、申請できます。相続人が被相続人の高額療養費を代わりに申請することが可能です。申請期限は診療月の翌月1日から2年以内ですので、忘れずに手続きを行いましょう。還付金は相続財産として扱われます。

Q. 身寄りがない場合は誰が費用を払う?

身寄りのない方が亡くなった場合、自治体が対応にあたります。まず故人の遺留金品から費用が充当され、不足分は自治体が負担します。生活保護を受給していた方の場合は、医療費は医療扶助、介護費は介護扶助として全額公費負担のため、原則として未払いは発生しません。葬祭扶助(12歳以上で上限206,000円以内)による直葬も利用できますが、事前申請が必要です。


まとめ

死亡後の入院費や施設利用料の清算は、相続人や連帯保証人に大きな負担を与えることがあります。特に、おひとりさまや身寄りの少ない方にとっては、「自分の後始末を誰に頼むか」は避けて通れない課題です。

死後事務委任契約を結んでおくことで、費用清算を含む死後の各種手続きを信頼できる第三者に任せることができます。元気なうちに預託金を準備し、財産情報を整理しておくことで、周囲に迷惑をかけず、ご自身も安心して日々を過ごすことができるでしょう。

大切なのは、「まだ早い」と思わず、今できることから始めることです。まずは専門家に相談し、ご自身に合った備え方を見つけてみてください。

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