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親なき後の準備ガイド|障がいのある子のための成年後見・財産管理・生活支援を徹底解説【2026年版】
投稿日/2026.04.05 更新日/2026.04.05
カテゴリー:任意後見・成年後見

「私が死んだら、あの子はどうなるの——」障がいのある子を育てる親御さんの多くが、この不安を胸に抱えながら毎日を過ごしています。現在、知的障害のある方は全国で約109万4千人。しかしその生活を支える成年後見制度の実際の利用者は、潜在的ニーズ約1,300万人に対してわずか約25万人(充足率約2%)にとどまっています。「親なき後」の備えは、一日でも早く、できるだけ具体的に進めることが、お子さんの安心な未来につながります。この記事では、成年後見制度の基本から財産管理の方法、2026年の制度改正まで、必要な情報をすべてわかりやすく解説します。
目次
「親なき後」問題とは何か
「親なき後」とは、障がいのある子どもを持つ親が、死亡・高齢化・病気などによって子どもの面倒をみられなくなったとき、誰が財産を管理し、生活を支えるのか——という問題です。
この問題が難しいのは、「親が亡くなってから」だけでなく、親が生きているうちから顕在化する点です。80代・90代になった親が、認知症を発症したり介護が必要になったりすれば、障がいのある子どもへの支援どころではなくなります。「8050問題」(80代の親と50代の障がいのある子どもが共倒れになる状況)は、今や社会問題として広く認識されています。
また、グループホームの待機者は全国で約2万2,000人。生活の場を確保するだけでも、数年単位の時間がかかります。だからこそ、親が元気なうちから、計画的に準備を進めることが不可欠なのです。
「親なき後」の準備で必要になる主な課題は以下のとおりです。
- 財産の管理・運用(誰が、どのように管理するか)
- 身上監護(住まい・医療・福祉サービスの手続き)
- 生活の場の確保(グループホームや施設への入居)
- 本人の意思や希望の尊重
- 万が一のときの緊急連絡・対応体制
これらをひとつひとつ整理していくことが、「親なき後」の準備の本質です。その中心的な制度が「成年後見制度」です。
成年後見制度の基本——3つの類型を理解する
成年後見制度は、判断能力が低下した方を法律的に支援するための国の制度です。障がいのある子どもへの支援においても、この制度が財産管理や身上監護の中核を担います。制度には判断能力の程度に応じた3つの類型があります。
| 類型 | 対象となる方 | 支援者の名称 | 支援の範囲 |
|---|---|---|---|
| 後見 | 判断能力がほとんどない方 | 成年後見人 | 全面的な代理権・取消権 |
| 保佐 | 判断能力が相当程度低下している方 | 保佐人 | 重要な法律行為の同意・取消権 |
| 補助 | 判断能力がある程度低下している方 | 補助人 | 特定の行為のみ(本人の申立・同意が原則必要) |
重度の知的障がいがある方は、判断能力がほとんどないと判断されることが多く、「後見」類型の対象となるケースがほとんどです。2024年の申立件数は合計41,841件で前年比2.2%増。開始原因の内訳は認知症が61.9%、知的障害が9.7%、統合失調症が9.2%となっています。
後見人の構成を見ると、司法書士・弁護士・社会福祉士などの専門職が全体の71%を占めており、親族後見人はわずか17%です。以前は親族が後見人になるケースも多かったのですが、不正横領の問題などから、近年は専門職が選ばれる割合が高まっています。

任意後見 vs 法定後見——障がいのある子にはどちらが適用される?
成年後見制度には「法定後見」と「任意後見」の2種類があります。この違いを理解しておくことは、準備を進めるうえでとても重要です。
任意後見とは
本人が判断能力のあるうちに、将来の後見人候補者を自分で選び、公正証書で契約を結んでおく制度です。「誰に支援してほしいか」を自分で決められる点が大きなメリットです。しかし、契約には一定の判断能力が必要なため、重度の知的障がいがある方は、そもそも契約能力がないとみなされ、任意後見の利用が困難なケースがほとんどです。
法定後見とは
家庭裁判所に申立を行い、裁判所が後見人を選任する制度です。本人に判断能力がなくても手続きを進めることができるため、重度の知的障がいがある方への対応は、基本的にこちらの「法定後見(後見類型)」となります。
子が未成年の場合の特別なケース
お子さんがまだ未成年の場合、親権者である親が、第三者(専門家やNPOなど)と任意後見契約を締結しておくことが可能です。これにより、親が亡くなったあとも、あらかじめ決めておいた後見人が速やかに支援を開始できる体制を作ることができます。
| 比較項目 | 任意後見 | 法定後見 |
|---|---|---|
| 後見人の選定 | 本人が選ぶ | 裁判所が選任 |
| 開始のタイミング | 判断能力低下後、家裁が監督人選任で開始 | 申立後、裁判所の審判で開始 |
| 重度知的障がいへの適用 | 原則困難(契約能力が必要) | 適用可能(後見類型) |
| 柔軟性 | 高い(支援内容を自分で設計) | 類型ごとに法定の範囲あり |
2026年の成年後見制度大改正——何が変わるのか
成年後見制度は現在、大きな転換点を迎えています。2025年6月10日に法務省が「中間試案」をとりまとめ、2026年の通常国会に民法改正案が提出される予定です。この改正は、現行制度の最大の課題を解決しようとするものです。
- 3類型の「補助」への一本化:現在の「後見・保佐・補助」という3段階の類型を整理し、より柔軟な支援体制へ移行する方向で検討されています
- 期間制の導入:現行制度では「一度始めると一生続く」という硬直性が批判されてきました。改正後は一定の期間を定め、その都度必要性を見直せる仕組みが導入される見込みです
- 権限の柔軟化:本人の状況や必要性に応じて、支援の内容・範囲を細かく調整できるようになる方向です
この改正により、「本人の自己決定の尊重」と「必要な支援の確保」のバランスが改善されることが期待されています。なお、改正内容はあくまで「予定」であり、成立・施行のタイミングは今後の国会審議によって変わる可能性があります。2025年以降の動向を専門家と連携しながら確認してください。
親が生前にやるべき7つの準備ステップ
「何から始めればいいかわからない」という声をよく聞きます。以下の7ステップを順に進めることで、準備に漏れがなくなります。
ステップ1:現状の把握
まず「今の状況」を正確に整理します。お子さんの障がいの種類・程度・判断能力のレベル、現在受けている福祉サービス、家族の財産状況(預貯金・不動産・保険など)を一覧にまとめましょう。この「見える化」が、その後のすべての準備の土台になります。
ステップ2:後見人候補の選定
誰に後見人を頼むかを検討します。候補としては、司法書士・弁護士・社会福祉士などの専門職、NPO法人、社会福祉法人などがあります。親族後見人も選択肢ですが、不正リスクや知識・負担の問題もあるため、専門職との組み合わせ(複数後見)も視野に入れましょう。
ステップ3:成年後見申立または任意後見契約
お子さんの状況に応じて、法定後見の申立か任意後見契約かを選択します。重度の知的障がいの場合は、家庭裁判所への法定後見申立が基本です。早めに弁護士・司法書士に相談し、必要書類(診断書・財産目録など)の準備を進めましょう。
ステップ4:財産管理体制の構築
特定贈与信託・家族信託・後見制度支援信託など、財産をどう管理・運用するかの仕組みを整えます。財産の種類や規模によって最適な方法が異なるため、専門家と相談しながら決めましょう。
ステップ5:遺言書の作成
誰に何を残すか、お子さんの生活費をどう確保するかを遺言書に明記します。「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」を活用すると、親が亡くなった後も段階的に財産を承継させる仕組みを設計できます。公正証書遺言での作成を強くお勧めします。
ステップ6:生活の場の確保
グループホームや福祉施設への入居は、早期からの情報収集・見学・登録が不可欠です。全国で約2万2,000人の待機者がいることからもわかるように、「必要になってから探す」では間に合わないケースが多くあります。今すぐ地域の基幹相談支援センターや市区町村の担当窓口に問い合わせましょう。
ステップ7:専門家・支援者ネットワークの構築
一人の専門家だけでなく、複数の支援者とのネットワークを作ることが大切です。基幹相談支援センター・親の会・社会福祉協議会・後見人候補者が連携する体制を整えておくことで、万が一の際にも迅速に対応できます。

財産管理の4つの方法——お子さんの将来のお金をどう守るか
財産管理は「誰が管理するか(後見人)」だけでなく、「どのような仕組みで管理するか」を設計することが重要です。代表的な4つの方法を解説します。
1. 特定贈与信託
障がいのある方のために財産を信託銀行に預け、定期的に生活費を給付する仕組みです。税制優遇が大きく、特別障害者(重度)は6,000万円まで、特定障害者(中軽度)は3,000万円まで贈与税が非課税となります。親が生前に財産を移転しておけるため、相続対策としても有効です。
2. 生命保険信託
親が加入している生命保険の保険金を、信託銀行が受け取り、障がいのある子どもに定期的に給付する仕組みです。保険金という形で財産を残せるため、不動産などの分割が難しい財産を持つご家庭に向いています。保険金が一度に渡ることで浪費・搾取されるリスクも抑えられます。
3. 遺言信託
遺言書の作成から保管・執行までを信託銀行が一括してサポートするサービスです。遺言の内容通りに財産を適切に分配・管理することができ、手続きの不備や親族間のトラブルを防ぐ効果があります。
4. 後見制度支援信託・支援預金
成年後見制度と組み合わせて利用する信託・預金の仕組みです。日常的な生活費以外の財産を信託銀行に預けることで、後見人による横領・不正流用を防ぐ効果があります。地方銀行や信用金庫でも「後見制度支援預金」として利用できます。
| 方法 | 主なメリット | こんな方に向いている |
|---|---|---|
| 特定贈与信託 | 最大6,000万円非課税・生前から対応可 | 重度障がいで財産が多い方 |
| 生命保険信託 | 保険金を定期給付・浪費防止 | 生命保険を活用したい方 |
| 遺言信託 | 遺言作成〜執行まで一括サポート | 遺言内容を確実に実行したい方 |
| 後見制度支援信託・支援預金 | 横領防止・安全な財産管理 | 後見人の不正を防ぎたい方 |
公的支援・福祉サービスを最大限に活用する
「親なき後」を支えるのは後見制度だけではありません。公的な支援サービスを組み合わせることで、お子さんの生活をより安定させることができます。
グループホーム(共同生活援助)
障がいのある方が少人数で共同生活を送る住まいです。タイプは「介護サービス包括型」「外部サービス利用型」「日中サービス支援型」「サテライト型」の4種類があり、本人の状況に合わせて選択できます。家賃補助として最大月1万円の助成も受けられます。待機者が非常に多いため、早期からの情報収集と見学登録が重要です。
障害福祉サービス
居宅介護(ホームヘルプ)・生活介護・就労継続支援(A型・B型)など多様なサービスがあります。利用者負担は原則として費用の1割(所得に応じた上限あり)です。お子さんの状況に合わせたサービスの組み合わせについては、相談支援専門員に「個別支援計画」を作成してもらいましょう。
日常生活自立支援事業
社会福祉協議会が運営する支援サービスです。福祉サービスの利用手続きの援助、日常的な金銭管理、書類の預かりなどを行います。利用料は1回約1,200円(生活保護受給者は無料)で、成年後見に比べて手軽に始められるため、後見制度への移行前の入口としても活用されています。
後見人の選び方と不正防止
後見人は、お子さんの財産と生活を長期にわたって支える重要な存在です。2024年の後見人等による不正件数は188件、被害額は約7億9,000万円にのぼっています。信頼できる体制を作るための対策を整理しておきましょう。
| 比較項目 | 親族後見人 | 専門職後見人 |
|---|---|---|
| 報酬 | 原則無報酬 | 月額2〜6万円程度 |
| 本人との関係 | 本人をよく知っている | 関係が薄くなりがち |
| 不正リスク | 感情・利害関係から不正が起きやすい | 客観的・中立的な管理 |
| 専門知識 | 知識・経験が不足しがち | 法律・福祉の専門知識あり |
近年は、親族+専門職の「複数後見人」体制が増えています。不正を防ぎつつ、本人にとって温かみのある支援体制を実現できます。
不正防止の具体的な対策
- 後見制度支援信託・支援預金の活用:日常費以外の財産を信託銀行・金融機関に預け、後見人が勝手に引き出せない仕組みにする
- 後見監督人の選任:後見人を監督する「後見監督人」を選任し二重チェック体制を作る
- 複数後見人制度の活用:複数の後見人が相互監視することで不正を防ぐ

費用の目安と支援制度
成年後見制度の申立にかかる費用の目安は約16万〜47万円(鑑定・専門家依頼費用含む)です。毎月の後見人報酬は管理財産が1,000万円以下で月額2万円程度、全国平均は月額約2万8,600円です。親族後見人は原則無報酬となります。
費用が払えない場合は、市区町村が実施する「成年後見制度利用支援事業」を活用してください。申立費用や後見人報酬の一部または全額を助成してもらえます。低所得の方や生活保護受給者でも後見制度を利用できるよう、ぜひお住まいの市区町村窓口に確認してみてください。
まとめ・相談窓口
「親なき後」の準備は、ひとりで抱え込む必要はありません。主な相談窓口をご活用ください。
- 地域の基幹相談支援センター:障害福祉の総合相談窓口
- 親なきあと相談室:行政書士・社会保険労務士が対応
- ゆうちょ財団「親なきあと相談会」:無料・要予約
- 市区町村の福祉・障害担当窓口:成年後見制度利用支援事業の申請
「親なき後」の準備は、お子さんへの最大の愛情表現です。今日から一歩ずつ、確実に進めていきましょう。
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