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認知症高齢者の意思決定支援|4ステップの実務手順・場面別対応・後見制度連携まで徹底解説【2026年版】
投稿日/2026.04.25 更新日/2026.04.30
カテゴリー:ケアマネ・施設職員向け

「この方、本当にご自身で決めているのだろうか」「ご家族の意向が強くて、本人の意思がどこにあるか分からない」——認知症の方を支える現場では、こうした戸惑いが日常的に生じています。
認知症があるからといって、意思決定能力が全くないわけではありません。残存能力を最大限に活かし、本人の意思に基づいた生活を実現することが、ケアマネジャー・施設職員に求められる「意思決定支援」の本質です。
この記事では、2025年3月に改訂された厚生労働省の最新ガイドラインをもとに、実務で使える意思決定支援の手順・具体的場面への対応・後見制度との連携まで体系的に解説します。
目次
意思決定支援とは何か——基本概念を整理する

意思決定支援の定義と目的
厚生労働省の定義では、意思決定支援とは「認知症の人が、自らの意思に基づいた日常生活・社会生活を送れることを目指す」ための支援です。
重要な前提として、認知症があること=意思決定能力がないことではありません。認知症の状態は、社会心理的・環境的・身体的・精神的・神経学的状態によって日々変化します。残存能力への配慮を常に忘れないことが支援の出発点です。
意思決定能力を構成する4つの要素
意思決定能力は以下の4つの力で評価されます。認知症のスクリーニング検査(HDS-R・MMSEなど)のスコアだけで判断するのではなく、場面ごとの個別評価が必要です。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 理解する力 | 説明された内容をどの程度理解しているか |
| 認識する力 | その状況を自分のこととして認識しているか |
| 論理的に考える力 | 理由を持って判断・比較できるか |
| 選択を表明できる力 | 意思を言葉・行動・表情で示せるか |
法的・倫理的根拠
意思決定支援の法的根拠として押さえておくべき主なものは以下のとおりです。
- 障害者の権利に関する条約(2014年批准)第12条:認知症を含む障害のある人の意思決定権を国際法レベルで保障
- 日本国憲法第13条:個人の尊重・幸福追求権
- 認知症基本法(令和5年成立・令和6年1月施行):意思決定の適切な支援が国・自治体の法的責務として明記された
特に認知症基本法の施行により、意思決定支援はガイドラインレベルの推奨から法律レベルの義務へと格上げされています。現場での取り組みの重要性はこれまで以上に高まっています。
厚生労働省ガイドライン(2025年第2版)のポイント
厚生労働省は2018年に「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」を策定し、2025年3月に第2版を発行しました。最新版では事例集が充実し、より実践的な内容に改訂されています。
ACPとの関係——「人生会議」の活用
ACP(アドバンス・ケア・プランニング)は「将来の医療・ケアについて、本人を人として尊重した意思決定の実現を支援するプロセス」です。厚生労働省が2018年に「人生会議」と命名した取り組みです。
認知症とACPの最重要ポイントは、判断能力が低下する前から始めること。タイミングを逃すと本人の意思を確認できなくなります。日常のケアのなかで好みや価値観を引き出し、それをACPにつなげることが現場の大切な役割です。
アドバンス・ケア・プランニングについて詳しくは、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)とは?ケアマネ・施設職員のための進め方・会話例【2026年版】もあわせてご覧ください。
実務で使える意思決定支援の4ステップ

STEP 1:意思形成支援
本人が意思を形成できるよう情報と環境を整えます。
- 本人が理解できる言葉・ペース・媒体(文字・絵・写真)で情報を提供する
- 意思形成を妨げる要因を除去する(体調不良・疲労・痛み・薬の副作用など)
- 選択肢を提示し、十分な考慮時間を確保する
STEP 2:意思表明支援
本人が意思を表明できるよう場と方法を整えます。
- 安心できる場所(なじみの居室・自宅)で、なじみの人(家族・担当スタッフ)を同席させる
- 午前中など本人が比較的落ち着いた時間帯を選ぶ
- 言語・非言語コミュニケーション(表情・うなずき・手の動き)双方に注目する
- 絵カード・写真・具体物を使った「見せる選択支援」も有効
- 拒否のサイン(手を振る・顔をそむける)も重要な意思表明として受け止める
STEP 3:意思実現支援
表明された意思を実際のケアに反映させ、チームで共有します。支援内容・経過を記録に残し、継続的に意思確認を繰り返すことが重要です。
STEP 4:推定意思・最善の利益の検討(最終手段)
STEP 1〜3を尽くしても意思確認が困難な場合のみ、以下の手順を踏みます。
- 生活歴・価値観・以前の発言から推定意思を組み立てる
- それも困難な場合は、関係者が協議して「本人の最善の利益」を判断する
- このプロセスと判断根拠を必ず記録に残す
具体的な場面別の対応方法
医療・延命治療の同意
現在の日本には「医療同意」に関する包括的な法律がなく、主治医の裁量と関係者の協議で対応されているのが実態です。ケアマネとしての対応ポイントは以下のとおりです。
- 本人が理解できるよう医師からの平易な説明を求める
- ACP・事前指示書がある場合はその内容を医療チームに伝達する
- 本人の過去の発言・価値観から推定意思を組み立てる
- 延命治療については日頃から「人生会議」を通じて意向を確認しておく
施設入居・転居の決定
本人が入居を明確に拒否している場合、強制は許されません。在宅生活の安全リスクや必要なケアを丁寧に説明し、理解を促すことが先決です。それでも困難な場合は成年後見制度の活用を検討します。
財産管理・金銭的判断
- 日常的な金銭管理:社会福祉協議会の「日常生活自立支援事業」を活用
- 法的な財産管理:成年後見制度
- ケアマネの役割:詐欺被害リスクを発見した際に地域包括・権利擁護機関に繋げる
家族と本人の意向が対立する場合
基本原則は「本人の意思が優先される」ことです。家族の意向が強くなりがちな場面ですが、ケアマネはアドボケイト(代弁者)として本人の立場に立ちます。
成年後見制度について詳しくは、成年後見制度の基礎知識|後見・保佐・補助3類型の違いをわかりやすく解説【2026年改正対応版】もあわせてご覧ください。
- 家族の意向の背景(心配・介護負担・認識のずれ)を丁寧に把握する
- 家族に本人の意思・選好を伝え、「○○さんならどうしたいと思うか」という問いかけで推定意思へ導く
- 対立が続く場合はカンファレンスを開き、多職種で協議する
- 第三者機関(権利擁護支援センター・後見人等)の関与を検討する
成年後見制度との連携——ケアマネが知っておくべきこと

法定後見・任意後見の違い
| 区分 | 法定後見 | 任意後見 |
|---|---|---|
| 開始のタイミング | 判断能力低下後に申立て | 判断能力があるうちに契約 |
| 後見人の決定 | 家庭裁判所が選任 | 本人が信頼できる人を選ぶ |
| 類型 | 後見・保佐・補助(3段階) | 単一 |
法定後見の3類型は判断能力の程度で決まります。「後見」は常に判断能力が欠ける状態、「保佐」は著しく不十分、「補助」は不十分な状態に対応します。
後見制度は意思決定支援の「補完」であることを忘れない
成年後見制度は意思決定支援の最後の手段・補完的役割です。後見人が選任された後も意思決定支援の努力は継続されます。ケアマネが正確に理解しておくべき重要な点があります。
- 成年後見人に医療行為への同意権はない
- 後見人に身柄引き取り・葬儀手配の義務もない
- 財産管理と身上監護は担えるが、死後事務には原則として関与しない
- 後見人も「意思決定支援を踏まえた後見事務ガイドライン」に従い、本人の意思を最大限尊重する義務がある
後見申立てを検討すべきタイミング
以下の状況が重なる場合は、地域包括支援センターや市区町村の窓口に相談しましょう。
- 認知症の進行で財産管理が困難になってきた(銀行手続きができなくなったなど)
- 詐欺・悪質商法の被害リスクが高まっている
- 施設入居の契約など重要な法的行為が必要になった
- 身寄りがなく意思確認できる人物がいない
- 家族間で意向の対立があり調整が困難
市区町村長申立の活用
家族がいない場合や家族が申立てを拒否している場合に活用できる制度です。ケアマネが地域包括支援センターと連携し、市区町村の高齢者福祉担当に相談・連絡することが入口になります。
任意後見について詳しくは、任意後見契約とは?わかりやすく解説|法定後見との違い・費用・手続きの流れもあわせてご覧ください。
倫理的留意点——「代弁」と「代理決定」の違い
| 概念 | 内容 |
|---|---|
| 代弁(アドボカシー) | 本人の意思・声を代わりに伝える。意思決定の主体はあくまで本人。ケアマネの基本的役割。 |
| 代理決定 | 本人の代わりに決定を下す行為。意思確認を尽くした後の最終手段。慎重に行う。 |
家族が「意思決定者」として強く前に出てくる場面では、ケアマネがアドボケイトとして「本人ならどうしたいか」という問いを常に中心に置くことが重要です。家族自身の都合や利益(遺産・施設入居への利便)が本人の意思と混同されるリスクに注意してください。
してはいけないこと
- 情報を意図的に隠す・特定の選択に誘導する
- 不安を煽ったり、本人を急かしたりする
- 支援者の価値観・都合を本人の意思に置き換える
意思決定支援記録の徹底
記録は説明責任・権利擁護・チーム共有の3つの意味で不可欠です。ケアプラン第5表(支援経過記録)に5W1Hで記載し、客観的事実と支援者の所見を区別して残しましょう。
ケアマネについて詳しくは、ケアマネのための成年後見制度説明マニュアル|利用者家族へのわかりやすい伝え方【2026年版】もあわせてご覧ください。
- いつ・どこで・誰が・何を説明したか
- 本人がどのように反応したか(言語・非言語)
- 選択肢の提示内容・本人の反応
- 家族・関係者との協議内容
- 意思確認が困難だった場合の推定意思と判断根拠
多職種連携でチームアプローチを実現する
意思決定支援はケアマネジャー一人で行うものではありません。多職種が日常の観察を記録・共有し、本人のパターンや好みを蓄積することが不可欠です。
| 職種 | 主な役割 |
|---|---|
| 医師 | 意思決定能力の医学的評価、医療行為の平易な説明 |
| 看護師 | 日々の状態把握、非言語コミュニケーションの観察 |
| 介護職 | 毎日の生活場面での意思確認と記録 |
| MSW(医療ソーシャルワーカー) | 制度・資源との橋渡し |
| PT/OT/ST | リハビリ場面での能力評価 |
| 成年後見人 | 法的権限が必要な場面での財産管理・身上監護 |
よくある質問(FAQ)
Q. 認知症が進んでいる方でも意思確認は必要ですか?
A. 必要です。認知症の程度に関わらず、残存能力を最大限活かして意思確認を試みることが原則です。言語での確認が難しい場合は非言語(表情・うなずき・拒否行動)を丁寧に観察してください。
Q. 家族が「本人は判断できない」と言う場合はどう対応しますか?
A. 家族の判断を鵜呑みにせず、本人と直接接する機会を設けて確認することが重要です。家族の発言は「家族の認識」として記録しつつ、本人の実際の能力を支援者側で評価してください。
Q. 本人が選択を何度も変える場合、どれが「本当の意思」ですか?
A. 意思は固定したものではなく変化します。その都度の意思を尊重しつつ、繰り返し確認した結果のパターンや文脈(体調・環境・伝え方)を分析することで、本人の「傾向」を把握することが重要です。
Q. 後見人が選任されたら、ケアマネの意思決定支援の役割はなくなりますか?
A. なくなりません。後見人は法的な財産管理等を担いますが、日常生活における意思決定支援の役割はケアマネ・介護職が引き続き担います。後見人とは情報共有・連携体制を構築し、チームとして支援を継続してください。
まとめ——「本人主体」を貫くことが専門職の使命
意思決定支援の核心は、「どんな状態であっても、その人らしい選択を支える」という姿勢です。認知症があっても、その人には歴史があり、価値観があり、好みがあります。それを丁寧に引き出し、チームで共有し、ケアに反映させることがケアマネジャー・施設職員の専門性です。
2025年に第2版が改訂された厚生労働省ガイドライン、そして令和6年施行の認知症基本法が示すように、意思決定支援は今後ますます重要な実務テーマになります。日常のケア記録・チームカンファレンス・後見制度との連携を通じて、一人ひとりの「本人主体」を実現していきましょう。
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