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アドバンス・ケア・プランニング(ACP)とは?ケアマネ・施設職員のための進め方・会話例【2026年版】

投稿日/2026.04.23 更新日/2026.04.30

カテゴリー:ケアマネ・施設職員向け

「もしものことについて、どう切り出せばいいか……」「本人が拒否したらどうしよう」「家族と意見が合わなかったときの対処法がわからない」——ケアマネジャーや施設職員の方から、こうした声を聞くことは珍しくありません。

ACP(アドバンス・ケア・プランニング)は、2018年の厚生労働省ガイドライン改訂で介護現場にも正式に位置づけられ、2024年度の介護報酬改定ではさらに加算要件として明文化されました。「やらなければならない」とわかっていても、実践のハードルを感じている方がほとんどではないでしょうか。

この記事では、ACPの基本的な考え方から、現場ですぐ使える会話例・進め方、記録のポイントまでを体系的に解説します。ケアマネ・施設職員として自信を持ってACPを実践できるよう、一緒に整理していきましょう。


目次

ACPとは何か?定義・目的・事前指示書との違い

ACP(Advance Care Planning:アドバンス・ケア・プランニング)とは、厚生労働省が次のように定義しています。

「将来の変化に備え、将来の医療及びケアについて、本人を人として尊重した意思決定の実現を支援するプロセス」

重要なのは「プロセス」という言葉です。ACPは一度書いて終わる書類ではなく、本人・家族・医療介護チームが繰り返し話し合い、本人の価値観や希望をケアに活かし続ける取り組み全体を指します。厚生労働省は2018年11月に「人生会議」という愛称を設定し、11月30日を「人生会議の日」として普及啓発を進めています。

リビングウィル・事前指示書とACPの違い

似た言葉が並ぶため混同されがちですが、以下の表で整理しましょう。

概念 内容 特徴
リビングウィル 特定の医療行為を行う/行わないという個人の事前宣言書 静的な文書。個人で作成
事前指示書 将来受けたい/受けたくない医療を書面で残す 医療処置に特化した文書
ACP 本人・家族・医療介護チームが繰り返し話し合うプロセス全体 「みんなの意思決定」。プロセスを重視

一言でまとめると、「事前指示書は結果(文書)、ACPはプロセス(話し合い)」です。事前指示書やリビングウィルはACPというプロセスの中で生まれる成果物のひとつと考えると、両者の関係が整理しやすくなります。

リビングウィルについて詳しくは、おひとりさまの医療・介護の意思決定ガイド|リビングウィルの書き方・人生会議・費用を徹底解説【2026年版】もあわせてご覧ください。


法的根拠とガイドライン(2018年改訂・2024年改定)

ACPを現場で実践する上で、法的根拠とガイドラインを押さえておくことは、本人・家族への説明の場でも大きな助けになります。

主な法的根拠

  • 「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(厚生労働省)
  • 「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」(厚生労働省、2018年)
  • 「ACP推進に関する提言」(日本老年医学会、2019年)

ガイドラインの変遷

厚生労働省ガイドラインは2007年に初版が策定され、その後2回の重要な改訂が行われています。

改訂内容
2007年(初版) 終末期医療の決定プロセスの基本的な考え方を策定
2015年(改訂) 「終末期医療」→「人生の最終段階における医療」に名称変更
2018年(現行版) ACPの概念を正式盛り込み。介護従事者も医療・ケアチームの一員と明文化

2018年の改訂は特に重要です。介護職・ケアマネジャーが「医療・ケアチームの一員」として意思決定支援に関わることが明確に位置づけられました。ケアマネや施設職員がACPに積極的に取り組む根拠がここにあります。

認知症について詳しくは、認知症高齢者の意思決定支援|4ステップの実務手順・場面別対応・後見制度連携まで徹底解説【2026年版】もあわせてご覧ください。


ACPの具体的な進め方(4ステップ)

ACPを「何から始めればいいかわからない」と感じる方のために、現場で実践しやすい4つのステップで整理します。

STEP 1:信頼関係の構築・導入

ACPは信頼関係の上にしか成り立ちません。まず「話せる雰囲気」を作ることが最初の一歩です。特に以下のタイミングは自然に切り出しやすい好機です。

  • 入院・入所時のアセスメント面談
  • 病状が変化したとき
  • 療養場所を移行するとき(在宅→施設、施設→病院など)
  • 定期的なケアプランの見直し時

STEP 2:価値観・希望の把握

「医療の話」から入ると本人が構えてしまうことがあります。まず「その人らしさ」を知ることから始めましょう。把握すべき主な内容は以下のとおりです。

  • 大切にしていること・生きがい・日常の楽しみ
  • 恐れていること・されたくないこと
  • 療養場所の希望(自宅/施設/病院)
  • 延命処置に関する考え(人工呼吸器・胃ろう・心肺蘇生)
  • 痛みや苦痛への対応の希望
  • 代理意思決定者(もしもの時に代わりに決めてもらえる人)

STEP 3:話し合い・共有

本人の希望が把握できたら、家族や医療介護チーム全体で共有する場を設けます。この段階で代理意思決定者を正式に確認・決定することも重要です。多職種カンファレンスでは、①情報共有→②予後の医師説明→③各職種の課題提示→④方針合意→⑤記録・次回日程設定の順に進めると整理しやすくなります。

STEP 4:記録・更新・実現

話し合いの内容を記録し、ケアプランに組み込みます。ACPは一度行えば終わりではありません。病状の変化や本人の気持ちの変化に応じて、少なくとも6か月ごとに見直すことが推奨されています。「更新し続けること」がACPの本質です。


現場で使える!会話例・切り出し方のコツ

「どう切り出せばいいかわからない」という声に応えるため、実際の現場で使いやすい言葉を具体的にご紹介します。

入口の声かけ例

最初のひとことが最大のハードルです。以下の言葉はそのまま使えます。

  • 「今後のことについて少しお話できますか?決めなくてもいいんです、考えを聞かせてもらうだけで」
  • 「縁起でもない話じゃなくて、もしものときに私が迷わないために。今日は10分だけ教えてほしいことがあるんですが」
  • 「○○さんはどんな暮らしが一番好きですか?」(医療ではなく生活の話から入る)

ポイントは「決めなくていい」「10分だけ」と伝えて心理的ハードルを下げることです。医療の話より先に「生活・生き方」の話から始めると、本人が構えずに話してくれることが多くなります。

価値観を引き出す質問例

  • 「大切にしていること、毎日の中で欠かせないことってありますか?」
  • 「嫌なこと、されたくないことから教えてもらえますか」
  • 「自宅でいたい気持ちはありますか?それとも病院のほうが安心ですか?」

代理意思決定者を確認する言葉

  • 「もし自分で話せなくなったとき、誰かに気持ちを伝えてもらうとしたら、誰が一番わかってくれそうですか?」

断られた・話したがらないときの対応

本人が話し合いを拒否した場合も、焦らず対応することが大切です。

  • 「わかりました、今日は無理しなくていいです」と一度引く
  • 「嫌なこと・してほしくないことだけ教えてもらえますか」と入口を小さくする
  • 日を改めて、別の職種(看護師や介護士など)から自然な流れで話題にする
高齢者とケアワーカーがACPについて穏やかに話し合うイメージ

本人の意思確認のポイント(認知症がある場合も含む)

認知症のある方のACPは「意思確認が難しい」と感じる方が多いですが、認知症があっても意思決定支援は可能です。重症度に応じたアプローチを使い分けましょう。

軽度認知症の場合

  • 本人と直接話し合いを行う(家族だけに確認しない)
  • できるだけ早い段階で代理意思決定者を決めておく
  • 「今、意思を確認できるうち」に記録を残すことが重要

中等度以上の認知症の場合

  • 表情・行動・日常の反応から「推定意思」を読み取る
  • 「嫌がっている」「喜んでいる」という日常ケアの観察記録を蓄積・活用する
  • 本人が過去に語っていた価値観・好み・人生観を手がかりにする

重度認知症の場合

  • 過去の言動・価値観の記録から「推定意思」に基づいた判断を行う
  • 個人の主観ではなく、チームで合議して方針を決定する
  • 家族や長期間関わってきたスタッフの証言を記録に残す

いずれの段階でも、「本人の最善の利益を追求する」という姿勢を全員が共有することが基本です。「決められない」ではなく「チームで一緒に考える」が正しいスタンスです。


家族との調整・多職種連携のポイント

ACPでもっとも難しい場面のひとつが、本人と家族の意向が一致しない場合の調整です。ここではケアマネジャー・施設職員として押さえておくべきポイントを整理します。

本人と家族の意向が一致しないとき

  • 本人の意思を最優先する原則を、チーム全員で最初に確認する
  • 家族の「反対」は多くの場合、愛情や不安から来ていることを傾聴する
  • 医師から「現在の医学的状況」を説明してもらう場を設けることで、家族の理解が深まることが多い
  • 「本人がこう言っていた」という記録が家族との調整を助ける

代理意思決定者の確認

  • 本人が指名した方を最優先する
  • 指名がない場合は、配偶者→子→その他家族の慣行に沿う
  • 代理意思決定者が複数の候補で揺れる場合は、本人の意向を最大限反映できる方を中心に据える

ケアマネジャーの役割

ケアマネジャーはACPのコーディネーター(ハブ)です。医師・看護師・介護職・家族をつなぐ中立的な調整者として、次の役割を担います。

ケアマネについて詳しくは、ケアマネのための成年後見制度説明マニュアル|利用者家族へのわかりやすい伝え方【2026年版】もあわせてご覧ください。

  • 各職種・家族の情報を整理し、全員が共通認識を持てるようにする
  • カンファレンスの場を設定・ファシリテートする
  • 話し合いの内容を記録し、チーム全体に共有する
  • ケアプランにACPの内容を反映させる

多職種カンファレンスの5手順

  1. 情報共有(各職種から現状報告)
  2. 予後の医師説明(現時点での見通しを全員で確認)
  3. 各職種の課題提示(それぞれの立場からの懸念・提案)
  4. 方針合意(本人の意思を中心に据えた方針を決定)
  5. 記録・次回日程設定(決定事項を記録し、次回の見直し日を決める)
多職種チームがケアプランについて話し合うカンファレンスのイメージ

ACP記録の書き方とケアプランへの反映

「記録に何を書けばいいかわからない」という声も多く聞かれます。ACPの記録は特別な書式がなくても実践できます。以下の6項目を含めることを基本とすれば、現場での運用がしやすくなります。

ACP記録に含める6項目

項目 記録内容の例
①本人の価値観・生き方 「家族と一緒に食事をすることが一番の喜び」など
②療養場所の希望 「できれば自宅で過ごしたい」「施設でも構わない」など
③延命治療の意向 人工呼吸器・胃ろう・心肺蘇生それぞれの希望
④代理意思決定者 氏名・続柄・連絡先
⑤痛み・苦痛への対応希望 「痛みは取ってほしい」「意識がある状態を保ちたい」など
⑥話し合いの日付・参加者 実施日・参加した家族名・職種名

ケアプラン第1表「総合的な援助の方針」への記載例

ACPで確認した本人の意思は、ケアプランの第1表「総合的な援助の方針」に反映させることが大切です。以下は記載例です。

  • 「家族とともに穏やかに過ごせるように関係機関で支援を行います」
  • 「本人・家族の意向を尊重し、苦痛のない療養生活を支援します」
  • 「ご本人の希望する在宅での生活が継続できるよう、医療・介護が連携して支援します」

記録はチーム全員がアクセスできる形で保管し、担当者が変わっても引き継げるようにしておくことが重要です。


よくある困りごとと解決策

現場で実際に直面しやすい困りごとと、その解決策を一覧にまとめました。

困りごと 解決策
死をどう切り出せばいいかわからない 医療・死の話ではなく「生活・生き方」から入る。「10分だけ」と時間を限定して心理的ハードルを下げる
本人が拒否・話したがらない 一度引く。「嫌なこと・してほしくないこと」だけに絞って入口を小さくする
家族が「まだ早い」と言う 家族の気持ちを傾聴する。医師から現状の医学的状況を説明してもらう場を設ける
認知症で意思確認が難しい 日常ケアの観察記録を活用する。推定意思をチームで合議し記録に残す
記録に何を書けばいいかわからない 標準6項目(価値観・療養場所・延命・代理人・苦痛・実施日)に沿って記録する
忙しくてACPに時間が取れない 日常ケアの中での一言・反応を記録する習慣から始める。既存の面談に組み込む
高齢者を家族とケアワーカーが温かく囲むイメージ

最新動向(2024年度介護報酬改定・2026年に向けた動き)

2024年度の介護報酬改定では、ACPに関する重要な変更が複数盛り込まれました。現場への影響を整理します。

2024年度介護報酬改定のポイント

  • ターミナルケアマネジメント加算の見直し:対象疾患が「末期の悪性腫瘍」から「回復の見込みがないと診断された者」に大幅拡大。ACP実施が算定要件に正式追加されました
  • ターミナルケア加算(訪問看護)の引き上げ:2,000単位から2,500単位へ引き上げ。終末期ケアへの評価が高まっています
  • 施設系看取り加算の重点化:死亡前日・前々日・当日のケアへ重点的に加算。看取りの質の向上が求められています

2026年度に向けた動き

  • 介護情報基盤の整備:ACPの内容を電子的に記録・共有できる仕組みの整備が進んでいます。施設間・職種間での情報共有がより円滑になる見通しです
  • 医療・介護連携のさらなる強化:在宅医療との連携強化、多職種チームによるACPの推進がさらに検討されています

加算要件としてACPが明文化されたことで、「取り組みたいが方法がわからない」という段階から、「実践して記録に残す」ことが現場の標準となってきています。

看取りについて詳しくは、介護施設での看取りケア完全ガイド|臨死期のサイン・家族支援・死後手続きまで【2024年版】もあわせてご覧ください。


よくある質問(FAQ)

Q. ACP(人生会議)はいつ始めればいいですか?

A. 「元気なうちから」が理想です。病状が進んでから始めると、本人が十分に意思を表明できない可能性があります。入所時や定期的なケアプラン見直しのタイミングを活用し、日常会話の延長として少しずつ進めましょう。

Q. 本人に意思能力がない場合はどうすればよいですか?

A. 代理意思決定者(家族など)と医療介護チームが協力して「推定意思」を探ります。過去の言動・価値観の記録、日常ケアでの観察記録が重要な手がかりになります。個人の判断ではなく、チームで合議して方針を決定することが原則です。

Q. ACPの内容は変更できますか?

A. はい、何度でも変更できます。ACPは本人の気持ちの変化や病状の進行に合わせて更新し続けるものです。「一度決めたら変えられない」というイメージを持たれがちですが、むしろ定期的に見直すことがACPの本質です。

Q. 施設での看取りにACPは必須ですか?

A. 法的な義務ではありませんが、2024年度改定でターミナルケアマネジメント加算の算定要件にACPが含まれたことで、実質的に実施が求められる場面が増えています。また、本人・家族の意向に沿った看取りを実現するためにも、ACPは欠かせない取り組みです。


まとめ:ACPは「死の宣告」ではなく「生き方の対話」

ACP(アドバンス・ケア・プランニング)は、「もしものとき」に本人の意思を尊重したケアを実現するための「話し合いのプロセス」です。難しく考える必要はありません。日常のケアの中で、本人の生き方や価値観に耳を傾けることから始められます。

  • ACPは文書ではなくプロセス。繰り返し話し合うことが大切
  • 切り出しは「生活・生き方」から。「10分だけ」で心理的ハードルを下げる
  • 認知症があっても意思決定支援は可能。チームで推定意思を合議する
  • 記録は6項目に沿って、ケアプランに組み込む
  • 2024年度改定でACPは加算要件にも明文化。実践が現場の標準へ

「どこから始めればいいかわからない」「うまく記録できているか不安」など、ACPの実践に関してお困りのことがあれば、ぜひ一度ご相談ください。

ACPの進め方・看取り支援についてお困りではありませんか?

つながりサポートでは、ケアマネジャー・施設職員の方からのご相談を無料でお受けしています。ACPの導入方法、記録の書き方、家族との調整など、現場で直面する困りごとを一緒に整理します。

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