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おひとりさまの財産管理と任意後見|4つの制度を徹底比較・費用・手続きの流れ【2026年改正対応版】
投稿日/2026.03.16 更新日/2026.03.18
カテゴリー:おひとりさま向け情報

「認知症になったら、誰が自分のお金を管理してくれるのか」「銀行口座が凍結されて、生活費も引き出せなくなったらどうしよう」——おひとりさまにとって、老後の財産管理は最も切実な問題の一つです。
2025年時点で、認知症患者が保有する金融資産は約215兆円、2040年には約349兆円に膨らむと推計されています。認知症で判断能力が低下すると、銀行口座は凍結され、不動産の売却も契約もできなくなります。
しかし、元気なうちに準備しておけば、この問題は防げます。本記事では、おひとりさまが活用できる4つの財産管理制度を比較し、特に有効な「任意後見契約」の仕組み・費用・手続きを詳しく解説します。
目次
認知症になると何が起こるか?財産管理の3大リスク
① 銀行口座の凍結
認知症が銀行に判明すると、口座は原則「凍結」されます。預金の引き出し・振込・定期預金の解約・投資信託の売買など、すべての金融取引ができなくなります。窓口での受け答えの異変やキャッシュカードの暗証番号忘れの頻発がきっかけになることが多いです。
② 不動産の処分ができない
判断能力が低下すると法律行為(契約)が無効となるため、自宅や収益物件の売却・賃貸契約ができなくなります。介護施設への入所費用を捻出するために自宅を売りたくても、手続きができないのです。
③ 詐欺・消費者被害
2025年の特殊詐欺被害額は全国で1,414億円超。被害者の65.4%が65歳以上の高齢者です。認知症で判断力が低下すると、訪問販売や電話勧誘で高額商品を契約してしまうリスクが大幅に高まります。
おひとりさまが使える財産管理制度4つを比較

おひとりさまの財産管理に活用できる制度は主に4つあります。それぞれの特徴を比較しましょう。
| 制度 | 利用できる時期 | 身上監護 | 費用感 | 公的監督 |
|---|---|---|---|---|
| 任意後見契約 | 判断能力低下後(事前に契約) | 可能 | 月額2〜6万円 | あり(監督人) |
| 財産管理委任契約 | 契約直後から利用可 | 可能 | 月額1〜3万円 | なし |
| 家族信託 | 契約直後から利用可 | 不可 | 初期30〜100万円 | なし |
| 日常生活自立支援事業 | 判断能力がやや不十分な方 | 限定的 | 1回約1,200円 | あり(社協) |
おひとりさまに最もおすすめ:「移行型」任意後見契約
おひとりさまにとって最も有効なのは、「財産管理委任契約+任意後見契約」の移行型です。元気なうちは財産管理委任契約で日常の財産管理を委託し、判断能力が低下した時点で任意後見契約に自動的に移行します。任意後見制度利用者の約75%がこの移行型を選択しています。
任意後見契約とは?仕組みをわかりやすく解説

任意後見契約は、「任意後見契約に関する法律」(平成11年法律第150号)に基づく制度です。判断能力が十分なうちに、将来の後見人と委任事務の内容を公正証書で定めておきます。
法定後見との決定的な違い
| 比較項目 | 任意後見 | 法定後見 |
|---|---|---|
| 後見人の選び方 | 自分で選べる | 家庭裁判所が選任 |
| 委任内容 | 自分で自由に決められる | 法律で定められた範囲 |
| 開始時期 | 元気なうちに契約 | 判断能力低下後に申立て |
| 取消権 | なし | あり(日常生活の行為を除く) |
| 監督者 | 任意後見監督人(必須) | 家庭裁判所が直接監督 |
最大のメリットは、「自分で後見人を選び、何を任せるか自分で決められる」点です。法定後見では、家庭裁判所が選んだ見ず知らずの専門職が後見人になることもあります。自分の意思を尊重した老後を送るなら、任意後見契約は不可欠です。
手続きの流れ(6ステップ)
- 任意後見受任者を決める:信頼できる専門職(弁護士・司法書士・社会福祉士)や知人を選ぶ
- 委任事務の内容を決める:財産管理(預金管理・不動産管理等)と身上監護(入院・施設入所手続き等)の範囲を具体的に定める
- 公証役場で公正証書を作成:本人と任意後見受任者が公証役場に出向き、公証人が作成
- 法務局に登記:公証人の嘱託により東京法務局に自動的に登記される
- 判断能力低下時に監督人選任を申立て:本人または受任者が家庭裁判所に申し立てる
- 任意後見監督人の選任・契約発効:監督人が選任され、任意後見契約の効力が発生する
任意後見契約にかかる費用
| 費目 | 金額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 公正証書作成手数料 | 約1万5,000〜3万円 | 登記嘱託手数料・印紙代含む |
| 専門家への契約書作成依頼 | 3〜30万円 | 行政書士3〜10万、司法書士5〜15万、弁護士10〜30万 |
| 任意後見人の月額報酬 | 月額2〜6万円 | 親族の場合は無報酬も多い |
| 任意後見監督人の月額報酬 | 月額1〜3万円 | 家庭裁判所が決定 |
| 監督人選任申立て費用 | 約5,000〜6万円 | 鑑定が必要な場合は高額に |
10年間利用した場合の総コストは、後見人報酬+監督人報酬だけで約360万〜1,080万円。管理財産額に見合った計画を立てることが重要です。
その他の財産管理制度も知っておこう
財産管理委任契約
判断能力があるうちから、信頼できる人に財産管理を委任する契約です。任意後見契約との最大の違いは、契約直後から効力が発生する点。身体的な衰え(入院・外出困難等)でも利用できます。ただし、公的な監督機関がないため、不正を防ぐ仕組みは自分で確保する必要があります。
家族信託
信頼できる人(受託者)に財産の管理・運用・処分権限を移転する仕組みです。「家族信託」という名称ですが、受託者は家族に限りません。甥・姪・友人・一般社団法人なども受託者になれます。ただし、身上監護(入院・施設入所の手続き)はカバーできないため、任意後見との併用が推奨されます。
費用は初期費用30〜100万円程度。不動産を含む場合は登録免許税も発生します。
日常生活自立支援事業
社会福祉協議会が運営する公的事業です。判断能力がやや不十分な方を対象に、日常的な金銭管理・福祉サービス利用の援助・通帳等の預かりを行います。費用は1回あたり約1,200円と低コストで、生活保護受給世帯は無料です。ただし、対応範囲は日常生活レベルに限られます。
おひとりさまの財産管理 ステージ別の最適解

判断能力の変化に応じて、利用すべき制度は異なります。
| ステージ | 状態 | 最適な制度 |
|---|---|---|
| 第1段階 | 元気で判断能力あり | 財産管理委任契約+任意後見契約(移行型)、家族信託、遺言書 |
| 第2段階 | 判断能力がやや低下 | 日常生活自立支援事業の併用 |
| 第3段階 | 判断能力が著しく低下 | 任意後見契約の発動(監督人選任申立て) |
| 第4段階 | 判断能力がほぼ喪失 | 法定後見制度(家庭裁判所が後見人選任) |
重要なのは「第1段階」のうちに準備を始めることです。判断能力が低下してからでは、任意後見契約も家族信託も締結できません。
2026年の成年後見制度 大改正のポイント
2026年2月、法制審議会が成年後見制度の大幅な改正要綱を法務大臣に答申しました。改正法案は今後の国会に提出予定で、制度の大転換が予定されています。
- 3類型(後見・保佐・補助)の廃止:「補助」に一本化し、本人のニーズに応じたオーダーメイド型に
- 終身制の廃止:必要な期間だけ利用できる有期制度に変更
- 後見人の柔軟な交代:本人の利益のために後見人の変更が容易に
- 報酬制度の透明化:業務内容に基づく報酬基準の明確化
この改正により、成年後見制度はより使いやすくなる見込みです。ただし、任意後見制度の重要性は変わりません。「自分で後見人を選び、委任内容を決められる」任意後見の価値は、法改正後も維持されます。
よくある質問(FAQ)
Q. おひとりさまで頼れる家族がいません。任意後見の受任者は誰にすればいいですか?
A. 弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職を任意後見受任者に選ぶことができます。各地の弁護士会・司法書士会・社会福祉士会に相談窓口があり、適任者を紹介してもらえます。また、身元保証サービスを提供するNPO法人や一般社団法人が受任者となるケースも増えています。
Q. 任意後見契約は途中で変更・解約できますか?
A. 任意後見監督人が選任される前であれば、公証人の認証を受けた書面でいつでも解除できます。監督人が選任された後は、正当な事由がある場合に家庭裁判所の許可を得て解除できます。
Q. 老後の生活費はどのくらい必要ですか?
A. 65歳以上の単身世帯の平均支出は月額約14万5,000円。年金収入だけでは毎月数万円の不足が生じるケースが多く、独身者が65歳から老後を過ごすために必要な資金は約2,300万〜4,500万円と試算されています。
Q. 家族信託は家族がいなくても使えますか?
A. はい、利用可能です。「家族信託」という名前ですが、受託者は家族に限りません。甥・姪・友人・一般社団法人なども受託者になれます。ただし、長期間の管理負担を引き受けてくれる信頼できる人が必要です。
まとめ
おひとりさまの財産管理は、元気なうちの準備がすべてです。
- 認知症になると口座凍結・不動産処分不可・詐欺被害のリスクが急増する
- おひとりさまに最もおすすめなのは「移行型」任意後見契約(財産管理委任契約+任意後見契約)
- 任意後見は自分で後見人を選び、委任内容を自由に決められる唯一の方法
- 費用は公正証書作成で約1.5〜3万円、後見人報酬は月額2〜6万円が相場
- 必要に応じて家族信託や日常生活自立支援事業との併用も有効
- 2026年の民法大改正で成年後見制度がより柔軟に。ただし任意後見の重要性は変わらない
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