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法定後見と任意後見の違い|比較表と、どちらを選ぶかの判断基準
投稿日/2026.10.23 更新日/2026.10.23
カテゴリー:任意後見・成年後見

「親が認知症になったら、預貯金や実家はどうなるのだろう」。そう考えて調べ始めると、「成年後見制度」という言葉に行き当たります。ところが、法定後見と任意後見という2つがあり、何が違うのか、どちらを選べばいいのか、分かりにくいと感じる方は少なくありません。
結論を先にお伝えすると、判断能力が十分にあるうちは任意後見も選べますが、すでに低下している場合は法定後見が基本になります。この記事では、2つの制度の違いを比較表で整理し、それぞれの仕組み、2026年6月に成立した制度改正の概要、どちらを選ぶかの判断基準、費用の考え方、始め方までを解説します。
目次
成年後見制度とは?法定後見と任意後見の2本立て
成年後見制度の目的
成年後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などで判断能力が不十分な方の財産管理や、介護・福祉サービスの契約などを、支援する人が本人に代わって行う制度です。預貯金の管理、不動産の売却、施設の入所契約といった場面で、本人が不利益な契約を結ばされないよう守る役割も果たします。
大きな違いは「判断能力が低下する前か後か」
成年後見制度は、大きく2つに分かれます。
- 法定後見:すでに判断能力が不十分になった後に、家庭裁判所が支援する人を選ぶ制度
- 任意後見:判断能力があるうちに、自分で支援する人と内容を決めて契約しておく制度
つまり、法定後見は「判断能力が低下した後」の制度、任意後見は「低下する前に備える」制度です。この違いが、後見人を誰にするか、どこまで本人の希望を反映できるかといった点に、大きく影響します。
【比較表】法定後見と任意後見の違い一覧
現行制度の違い
| 項目 | 法定後見 | 任意後見 |
|---|---|---|
| 開始のタイミング | 判断能力が不十分になった後 | 判断能力があるうちに契約し、低下した後に効力が生じる |
| 手続きの方法 | 家庭裁判所に申立て | 公証役場で公正証書により契約 |
| 後見人の選び方 | 家庭裁判所が選任(候補者を挙げることはできるが、希望どおりになるとは限らない) | 本人が契約で自分で選ぶ |
| 後見人の権限 | 法律で定められた範囲(類型により異なる) | 契約で定めた範囲 |
| 取消権 | あり(類型・範囲により異なる) | なし |
| 監督 | 家庭裁判所(必要に応じて後見監督人) | 任意後見監督人(家庭裁判所が選任) |
| 報酬 | 家庭裁判所が決定 | 任意後見人の報酬は契約で定める。監督人の報酬は家庭裁判所が決定 |
| 終了 | 原則として本人が亡くなるまで続く(現行制度) | 契約の終了、または本人の死亡 |
※2026年6月に法定後見の見直しが成立しています(後述)。表は、現在の制度の内容です。
表の見方で特に重要な2点
1つ目は、後見人を誰にするか、自分で決められるかです。 任意後見では、信頼できる家族や専門家を、本人が契約で選べます。法定後見では、家庭裁判所が選ぶため、親族が候補者になっていても、司法書士や弁護士などの専門職が選ばれる場合があります。
2つ目は、取消権の有無です。 法定後見では、本人が不利益な契約をしてしまったとき、後見人などが後から取り消せる場合があります。一方、任意後見人には取消権がありません。この違いは、悪質な訪問販売などの被害を防ぐ観点で、重要な意味を持ちます。
法定後見の仕組み
3つの類型(後見・保佐・補助)
現行の法定後見は、本人の判断能力の程度によって、3つの類型に分かれます。
| 類型 | 本人の状態 | 主な支援 |
|---|---|---|
| 後見 | 判断能力を欠く状態が通常 | 後見人が財産管理を広く代理し、日常生活に関する行為以外は取り消せる |
| 保佐 | 判断能力が著しく不十分 | 重要な行為(借金、不動産の売買など)に保佐人の同意が必要。同意なしの行為は取り消せる |
| 補助 | 判断能力が不十分 | 本人が選んだ特定の行為について、補助人が同意・代理する |
申立ての流れ
法定後見は、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てをして始まります。申立てができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、市区町村長などです。
- 家庭裁判所へ申立て(申立書、診断書、本人の財産に関する資料などを提出)
- 家庭裁判所による調査(本人や親族への事情の聴取など)
- 必要に応じて、医師による鑑定
- 審判(後見人の選任)
- 後見人による事務の開始
後見人は家庭裁判所が選ぶ
申立ての際に、後見人の候補者を記載することはできますが、最終的に誰が選ばれるかは家庭裁判所が決めます。親族が選ばれる場合もあれば、司法書士、弁護士、社会福祉士などの専門職が選ばれる場合もあります。
法定後見の注意点
- 原則として、一度始まるとやめられない:現行制度では、本人が亡くなるまで続くのが原則です(判断能力が回復した場合などを除く)。「不動産を売るためだけに、後見を使いたい」という場合でも、その後も続きます
- 後見人への報酬が発生する:専門職が後見人になった場合は、家庭裁判所が決める報酬を、本人の財産から支払います
- 本人の財産の使い方に制約がある:後見人は本人の財産を守る立場のため、家族のための支出や、相続税対策のための贈与などが、原則としてできません
- 居住用の不動産の売却には、家庭裁判所の許可が必要:民法第859条の3により、本人が住んでいた、または住む予定の建物や土地の売却には、家庭裁判所の許可が必要で、許可のない売却は無効です
任意後見の仕組み
元気なうちに、公正証書で契約する
任意後見は、判断能力が十分なうちに、将来自分の財産管理や生活上の契約を任せる人(任意後見受任者)と、任せる内容を決めて、公証役場で公正証書により契約します。契約の内容は登記され、後見人の権限を証明できるようになります。
任せる内容の例は、預貯金の管理、不動産の管理・処分、施設の入所契約、介護サービスの契約などです。どこまでを、誰に任せるかを、自分で設計できる点が大きな特徴です。
判断能力が低下したら、任意後見監督人の選任を申し立てる
任意後見は、契約しただけでは効力が生じません。本人の判断能力が低下したときに、家庭裁判所に「任意後見監督人」の選任を申し立て、監督人が選任されたときから、契約の効力が生じます。監督人は、任意後見人が契約どおりに適切に事務を行っているかを監督します。
申立てができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者です。本人以外の人が申し立てる場合には、本人の同意が必要です(本人が意思を表示できない場合を除く)。
任意後見の注意点
- 取消権がない:本人が判断能力の低下後に不利益な契約をしてしまった場合、任意後見人は、その契約を取り消すことができません
- 契約から効力が生じるまでの空白がある:契約を結んでから、判断能力が低下して監督人が選任されるまでの間、本人の状況を確認する仕組みがないと、実際に必要になったときに手続きが遅れることがあります。見守り契約や、財産管理等委任契約を併用する方法があります
- 死後の手続きは対象外:任意後見は、本人が亡くなったときに終了します。葬儀や納骨、家財の整理などは、死後事務委任契約など、別の備えが必要です
- 任意後見人の人選が重要:信頼できる人を選べる反面、任意後見人が不適切な行為をしたとき、監督人が選任された後でなければ、監督が働きません
後見人にできないこと・よくある誤解
法定後見でも任意後見でも、後見人ができることには限りがあります。次のような点は、一般に誤解されやすい部分です。
- 医療行為への同意:手術や延命治療などの医療行為の同意は、後見人の権限に含まれないとされています。医療の場面では、本人の意思や、家族の意見を踏まえた対応がとられるのが一般的です
- 身元保証人や連帯保証人になること:後見人は、入院や施設入所の際の身元保証人になることは、通常できません。保証人が必要な場合は、別の備え(身元保証サービスなど)を考える必要があります
- 本人の日常的な介護や世話そのもの:後見人は、契約や手続きなどの法律行為を担当します。食事の世話などの事実行為は、含まれません
- 本人の財産を、家族のために使うこと:原則として、本人のためにのみ使います。贈与や、相続税対策のための支出は、制限されます(任意後見でも、契約の内容と、監督の仕組みの範囲内です)
また、任意後見契約が登記されている場合に、さらに法定後見の申立てがあったときは、原則として任意後見が優先され、本人の利益のために特に必要がある場合に限り、法定後見が開始されるとされています。どちらの制度が適用されるかは、個別の状況で判断が分かれるため、迷う場合は専門家に相談してください。
【2026年6月成立】成年後見制度の改正で何が変わる?
改正法の成立
成年後見制度の見直しを柱とする改正民法などは、令和8年(2026年)6月17日に参議院本会議で可決・成立しました。解説資料などによると、公布は同年6月24日(令和8年法律第45号)です。成年後見制度に関する部分の施行は、「公布の日から2年6か月を超えない範囲内で政令で定める日」とされており、施行日はまだ決まっていません。現在は、これまでの制度が続いています。
主な改正内容
解説資料などによると、主な改正の内容は次の通りです。
- 法定後見の「補助」への一本化:現行の後見・保佐の制度を廃止し、補助に一本化して、適用の範囲を広げる
- 「特定補助」の新設:特定の事項に限って、代理などの支援を受けられる類型で、必要な範囲の支援を個別に設計しやすくなる
- 利用の終了:現行は、本人が亡くなるまで続くのが原則だが、制度を利用する必要がなくなったと家庭裁判所が認めた場合に、終了できる仕組みが整えられる
改正の影響をどう考えるか
改正によって、「一度始めたらやめられない」という法定後見の使いにくさは、緩和されると見込まれています。一方で、すでに法定後見を利用している方の扱い(経過措置)や、細かな運用は、今後の政令や公表される情報の確認が必要です。また、施行までの間は、現行制度が適用されます。
任意後見は、本人の意思で後見人や内容を決められる制度として、引き続き重要な選択肢です。改正後の制度と任意後見の関係は、施行に向けて公表される情報を確認してください。なお、本記事の改正の説明は、成立時点の解説に基づくものです。最新の内容は、法務省の公表資料などで確認してください。
どちらを選ぶ?困りごと別の判断基準
判断のフロー
まず、本人の判断能力が十分にあるかを確認します。
- 判断能力が十分にある:任意後見を含め、家族信託などの選択肢も検討できます
- すでに判断能力が低下している:任意後見契約は結べません。法定後見が基本となります
任意後見契約は、契約の時点で、本人に契約の内容を理解できる判断能力があることが前提です。「まだ大丈夫」と先送りにしている間に、選択肢が狭まってしまう点に注意が必要です。
ケース別の考え方
| 状況 | 考え方 |
|---|---|
| 親が元気なうちに、将来に備えたい | 任意後見を軸に、見守り契約や遺言書、必要に応じて家族信託を検討 |
| すでに認知症で、実家を売る必要がある | 法定後見の申立てが基本。居住用の不動産の売却には、家庭裁判所の許可が必要 |
| おひとりさまで、頼れる家族がいない | 任意後見に、死後事務委任、見守り契約を組み合わせる。専門家や法人を後見人にする選択肢もある |
| 後見人を、信頼できる親族に任せたい | 任意後見で、本人が契約で選ぶ。法定後見では、希望どおりになるとは限らない |
| 親族間で意見が割れている | 法定後見では、家庭裁判所が選ぶ。争いが大きい場合は弁護士に相談 |
併用の考え方
任意後見は、単独で完結する制度ではありません。**任意後見(判断能力の低下後の支援)、見守り契約(契約から発効までの確認)、死後事務委任契約(亡くなった後の手続き)、遺言書(財産の承継)**を組み合わせることで、各局面をカバーできます。家族信託との違いや併用の考え方は、別の記事で解説しています。[認知症対策(任意後見・家族信託)についてはこちら]
費用の考え方と始め方の流れ
費用の内訳
費用は、制度や専門家ごとに、複数に分かれます。
- 法定後見:申立ての手数料(収入印紙)、登記の手数料、郵便切手、鑑定が必要な場合の鑑定費用、後見人への報酬(家庭裁判所が決定)、申立ての書類作成を専門家に頼む場合の報酬
- 任意後見:公証人の手数料、登記の費用、契約書作成を専門家に頼む場合の報酬、任意後見人への報酬(契約で定める)、任意後見監督人への報酬(家庭裁判所が決定)
金額は、案件や依頼先によって異なります。見積もりでは、いつ、何の費用が、どのくらい発生するのかを、必ず確認してください。
始め方の流れ
- 相談:家族の状況、本人の判断能力、希望を整理する
- 制度の選択:任意後見、法定後見、家族信託などを比較する
- 手続き:任意後見なら契約書の作成と公正証書化、法定後見なら家庭裁判所への申立て
- 運用:契約の内容に沿った管理や、定期的な見直し
【要記入:相談実績の件数、提携している司法書士・行政書士・税理士の体制、対応エリア、後見に関する相談メニューなどを、貴事務所の実際の内容でご記入ください】
よくある質問・まとめ
よくある質問
Q. 法定後見は、途中でやめられますか? 現行制度では、原則として、本人が亡くなるまで続きます。判断能力が回復した場合などは、取消しの手続きがあります。2026年6月に成立した改正では、制度を利用する必要がなくなったと家庭裁判所が認めた場合に終了できる仕組みが整えられる、とされています(施行は未定)。
Q. 親族が後見人になれますか? 法定後見では、申立ての際に親族を候補者として挙げることはできますが、最終的には家庭裁判所が選任します。任意後見では、本人が契約で選んだ人(家族を含む)が任意後見人になります。
Q. 任意後見は、誰に頼めますか? 家族、親族、友人、司法書士や弁護士などの専門職、法人などを、本人が自由に選べます。信頼関係と、継続して任せられるかを確認して選んでください。
Q. すでに認知症でも、任意後見は結べますか? 任意後見契約は、契約の時点で、本人に契約の内容を理解できる判断能力があることが前提です。判断能力が低下している場合は、法定後見が基本となります。判断能力があるかどうかは、状況によって異なるため、専門家や医師に相談してください。
Q. 相談だけでも大丈夫ですか? はい、どの制度が合うか分からない段階での相談でも問題ありません。状況を伺いながら、適した選択肢を整理します。
まとめ
法定後見と任意後見の違いは、判断能力が低下した後か、前か、そして後見人を家庭裁判所が選ぶか、自分で選ぶかという点にあります。判断能力が十分にあるうちは、任意後見に、見守りや死後の備えを組み合わせた設計が選べます。すでに低下している場合は、法定後見が基本です。2026年6月には、成年後見制度の見直しが成立しており、施行までは現行制度が続きます。先送りにするほど選択肢が狭まるため、まずは無料相談などで、状況を整理するところから始めてみてください。

