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親の成年後見を検討するタイミング完全ガイド|認知症の財産管理・申立て判断基準・代替手段を徹底解説【2026年版】
投稿日/2026.03.31 更新日/2026.03.31
カテゴリー:親の終活(子世代向け)

「母が銀行の窓口で認知症と判断されて、口座が使えなくなった」「施設の入居費用を払いたいのに、親の預金が凍結されて手が出せない」——このような事態に突然直面する家族が後を絶ちません。認知症高齢者は2025年時点で約600万人を超えているにもかかわらず、成年後見制度を利用しているのはその約4%に過ぎません。
親の認知症が進む前に知っておくべきことは、「いつ・どの制度を使うか」の判断基準です。本記事では、成年後見制度を検討すべきタイミング、申立ての手続きと費用、そして「できれば使わずに済む」代替手段まで、子世代が知っておくべきすべてを徹底解説します。
目次
成年後見制度を検討すべき「5つのサイン」
以下のような場面に直面したとき、成年後見制度の検討タイミングです。
- 銀行窓口で取引を断られた:名前・生年月日が言えない、署名できないなど、正常な意思表示が困難と判断された場合
- 施設入居・介護契約が結べない:本人名義での契約締結に代理人が必要になった
- 悪質商法の被害に遭った:不当な契約を取り消す法的手続きに後見人が必要
- 相続が発生した:遺産分割協議に参加する判断能力がなくなった場合、後見人なしでは協議が進まない
- 財産の使い込みが疑われる:家族による不正を防ぐために第三者の後見人が必要な場合
重要な原則:認知症が発症して判断能力が失われた後は、家族信託・任意後見などの代替手段は原則として使えなくなります。法定後見しか選択肢がなくなるため、「まだ早い」と思ううちに備えを始めることが鉄則です。
法定後見の3類型|認知症の程度で変わる支援の内容
法定後見には、認知症の進行度に応じて3つの類型があります。
| 類型 | 対象者の状態 | 認知症の目安 | 支援者の権限 |
|---|---|---|---|
| 後見 | 判断能力をほぼ欠く常況 | 重度の認知症 | ほぼすべての法律行為を代理・取消可 |
| 保佐 | 判断能力が著しく不十分 | 中等度の認知症 | 重要な財産行為に同意権・取消権 |
| 補助 | 判断能力が不十分 | 軽度の認知症 | 特定の行為に限定した同意権・代理権 |
どの類型に当たるかは、医師の診断書をもとに家庭裁判所が判定します。補助・保佐の申立ては本人の同意(意思確認)が要件となるため、認知症の進行度によってはこの段階から申立てができなくなることがあります。

口座凍結はいつ起こるのか|知っておくべき「5つの瞬間」
銀行口座の凍結は予告なく突然やってきます。銀行が認知症を「検知」するタイミングは主に以下の場面です。
- 窓口での意思確認不能:名前・生年月日が言えない、同じ質問を繰り返すなど、正常な意思表示が困難と判断された瞬間に取引停止
- 大口の連続引き出し:短期間に限度額近くを連続で引き出すとシステムが検知し、確認電話を入れる。応答が曖昧だと凍結に至る
- 家族の窓口発言:「親が物忘れがひどいので代わりに…」という一言が事実上の認知症通知になる
- 他の親族からの通報:相続争い等で兄弟姉妹が銀行に連絡するケース
- 振込・解約操作の不自然さ:オペレーターとの会話が成立しない場合
凍結後に成年後見の申立てをしても、後見人が選任されるまで通常3〜6ヶ月かかります。施設入居費用など緊急の資金需要には最悪のタイミングとなります。典型的な失敗例は「急な入院→施設探し→入居費用数百万円が必要→口座凍結済→子が全額立替→3〜6ヶ月後にようやく解決」というパターンです。
なお、2021年の全国銀行協会の新指針では、本人の利益に明らかに適合する医療費等については家族が代わりに引き出しできる方針が示されましたが、これは義務ではなく指針であり、対応は金融機関によって異なります。
後見申立ての手続き・費用・期間
いざ成年後見が必要になった場合、申立ては本人の住所地を管轄する家庭裁判所に行います。
申立てできる人の範囲
本人・配偶者・4親等内の親族(子・孫・兄弟姉妹・叔父叔母など)・検察官・市区町村長が申立て可能です。身寄りがない場合や親族が申立てを拒む場合は市区町村長が最終手段として申立てできます。
主な費用の内訳
| 費用項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 申立手数料(収入印紙) | 800円〜3,400円 |
| 後見登記手数料 | 2,600円 |
| 郵便切手・送付費用 | 約3,000〜4,000円 |
| 医師の診断書作成費用 | 5,000〜10,000円程度 |
| 鑑定費用(必要な場合のみ・約5〜10%のケース) | 5万〜20万円 |
| 専門家(司法書士・弁護士)への依頼費用 | 10万〜20万円程度 |
| 合計目安 | 約16万〜47万円 |
申立てから審判確定まで多くの場合4か月以内ですが、鑑定が必要なケースや複雑な事案はさらに長くなります。
後見人は誰が選ばれるのか
最高裁判所の2023年統計によると、後見人等に親族が選任されたのは全体の約18.1%にとどまり、弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職が約81.9%を占めています。ただし、申立て時に親族を候補者として記載した場合の認容率は約85.6%と高いため、家族が後見人になることは十分可能です。親族後見が認められやすい条件は「財産がシンプル」「親族間に争いがない」「候補者に適性がある」などです。

成年後見のコストと問題点
成年後見制度は強力な権利保護の仕組みですが、使い続けるには相応のコストがかかります。
専門職後見人の報酬相場(東京・大阪家庭裁判所基準)
| 管理財産額 | 月額報酬の目安 | 10年間の累計 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 月2万円 | 約240万円 |
| 1,000万〜5,000万円 | 月3〜4万円 | 約360〜480万円 |
| 5,000万円超 | 月5〜6万円 | 約600〜720万円 |
報酬は本人の財産から支払われます。認知症発症からの平均生存期間は約10年とされており、長期継続になるほどコストが膨らみます。
成年後見制度の主な問題点
- 終身制:本人が死亡するまで原則終了できない(能力回復しても「卒業」できない)
- 財産運用の制限:安全・保守管理が求められ、株式運用・積極的な相続税対策ができない
- 家族後見人が選ばれにくい:専門職が約82%を占め、見知らぬ専門家が入ってくることへの抵抗感がある
- 毎年の報告義務:家庭裁判所への後見事務報告・財産目録提出が永続的に発生する
成年後見に代わる3つの選択肢
判断能力があるうちに備えておけば、成年後見を使わずに済む(または最小限にできる)選択肢があります。
①家族信託(民事信託)
元気なうちに、信頼できる子などに財産の「管理・処分権」を移す契約です。口座凍結を回避し、不動産売却・資産運用も柔軟に対応できます。
- 初期費用:公正証書作成+登記費用で50〜100万円程度
- ランニングコスト:家族が受託者の場合は原則ゼロ
- 注意点:身上監護(病院・施設の決定)はカバーできないため、任意後見との併用が理想
②任意後見制度
判断能力があるうちに公正証書で後見人を自分で指定しておく制度です。認知症になった後に家庭裁判所への申立てで発動します。
- 後見人を自分で選べる(法定後見では家庭裁判所が決定)
- 発動後の監督人報酬:月1〜2万円程度(法定後見より低コスト)
- 身上監護も対応可能(法定後見に近い権限を設計で組み込める)
③日常生活自立支援事業
軽度の判断能力低下の方向けに、社会福祉協議会が提供する公的支援サービスです。
- 対応内容:福祉サービス利用援助・日常的金銭管理・書類の預かり
- 費用:訪問1回あたり平均約1,200円(成年後見と比べて大幅に低コスト)
- 限界:不動産売却・複雑な財産管理・法律行為全般には対応不可。認知症が進行したら成年後見に移行が必要
制度選択の費用比較(10年間の総コスト)
| 対策 | 初期費用 | 10年間の維持費 | 10年総計 |
|---|---|---|---|
| 何もせず凍結後に後見申立て | 10〜30万円 | 360〜720万円 | 370〜750万円 |
| 家族信託のみ | 50〜100万円 | ほぼゼロ | 50〜100万円 |
| 任意後見(発動後) | 5〜10万円 | 120〜240万円 | 125〜250万円 |
| 家族信託+任意後見(推奨) | 60〜120万円 | 120〜240万円 | 180〜360万円 |

認知症の進行段階別|対応ロードマップ
どの段階でどの手を打つかが、最終的なコストと安心の差を生みます。
段階1:MCI(軽度認知障害)・認知症が出る前
物忘れはあるが日常生活は自立。まだ判断能力がある最重要タイミングです。
- 家族信託の検討・契約(最も費用対効果が高い)
- 任意後見契約の公正証書締結
- 遺言書の作成(公正証書遺言)
- 財産目録・通帳の整理と家族への情報共有
- 金融機関への代理人登録
段階2:軽度〜中等度の認知症
複雑な判断は困難になるが、日常的な会話はできる段階。家族信託・任意後見の最後のタイミング。
- 任意後見の発動申立て(任意後見監督人の選任)
- 家族信託がまだであれば最終検討(医師の判断能力確認が必須)
- 補助・保佐の申立てを検討
- 要介護認定の申請・ケアマネ選定
段階3:中等度〜重度の認知症
日常的な判断が困難になった段階。法定後見(後見・保佐)しか選択肢がなくなります。
- 保佐または後見の申立てを速やかに行う
- 家族を後見人候補者として記載して申立て
- 施設入居の検討・手続き(後見人が行う)
- ※この段階からは家族信託・任意後見の新規契約は不可
2026年の成年後見制度大改正|何が変わるのか
法務省は2025年6月に民法改正の中間試案をまとめ、2026年通常国会への改正案提出を目指しています。主な改正ポイントは以下の通りです。
- 終身制の廃止:家庭裁判所が期間を設定し、更新なしで終了可能に。本人の能力回復や代替手段が整えば途中終了も可能
- 3類型の一本化:後見・保佐・補助を「補助」に一本化し、必要な支援内容を柔軟に設定できる制度へ転換
- 後見人の交代円滑化:相性・生活適合性などを理由にした交代が可能になる
- 報酬の透明化:全国基準の統一と最高裁によるデータ公表
施行は2027〜2028年頃の見込みです。改正後は「必要な期間だけ使える制度」に近づきますが、改正前の現時点では早期の備えが最善策であることに変わりありません。
よくある質問(FAQ)
Q. 親が軽度の認知症と診断されました。今すぐ成年後見の申立てが必要ですか?
A. 軽度の段階では成年後見の申立てよりも、まず家族信託と任意後見の締結を検討するほうが適切です。判断能力がある段階での準備は費用対効果が高く、本人の意思も反映できます。症状が進んでからでは選択肢が法定後見のみとなります。
Q. 家族が後見人になることはできますか?
A. 申立て時に親族を候補者として記載した場合の認容率は約85.6%と高く、十分可能です。ただし、財産額が多い場合や親族間に争いがある場合は、専門職後見人が選任されるか、後見制度支援信託(財産の大部分を信託銀行で管理)の利用が条件になることがあります。
Q. 成年後見を申立てた後、やめることはできますか?
A. 現行制度では原則として本人が死亡するまで終了できません。2026年の法改正後は期間設定・途中終了が可能になる見込みですが、現時点では「使い始めたらずっと続く」という点を理解した上で申立てを検討する必要があります。
Q. 親が認知症になる前にやっておくべき最優先事項は?
A. ①財産の棚卸しと家族間での情報共有、②家族信託または任意後見契約の締結(公正証書)、③公正証書遺言の作成、の3つです。これらは判断能力があるうちにしか準備できないため、「まだ元気だから」という段階でこそ動くことが重要です。
まとめ:親の認知症に備えるために今できること
成年後見制度は「最後の砦」です。できれば使わずに済む準備を、親が元気なうちに整えることが最善策です。
- 銀行口座凍結は突然やってくる。凍結後の解決には3〜6ヶ月かかる現実を知っておく
- 判断能力があるうちは家族信託・任意後見で備える(費用対効果が最も高い)
- 成年後見の申立ては4親等内の親族が可能。家族後見人を希望するなら候補者として記載する
- 2026年の法改正で終身制が廃止される見込み。制度の動向も定期的にチェックしておく
- 軽度認知症の段階が最後のチャンス。「まだ大丈夫」という判断は危険
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