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任意後見とは?契約内容・行政書士に頼む費用と流れをわかりやすく解説
投稿日/2026.09.29 更新日/2026.09.29
カテゴリー:任意後見・成年後見、死後事務委任、終活アドバイス、見守り・生活サポート

目次
任意後見制度とは?子どもがいない方・親が高齢な方が知っておきたい基本
任意後見制度は、判断能力がしっかりしている今のうちに、「誰に」「何を」任せるかを自分で決めて契約しておく制度です。 認知症などで判断能力が低下したあと、その契約にもとづいて、あなたが選んだ人が財産管理や介護・医療に関する手続きを代わりに行います。
「後見」と聞くと難しそうですが、仕組みは「将来のための委任状を、公証役場で正式な書類にしておく」と考えるとイメージしやすくなります。
任意後見制度をひとことで言うと
結論:任意後見は「自分の老後の代理人を、自分で選んでおく契約」です。
認知症になると、預貯金の引き出し、施設入所の契約、不動産の売却といった手続きが、本人でもできなくなる場合があります。家族が代わりに手続きしようとしても、銀行が本人以外の対応を断るケースは珍しくありません。
任意後見制度は、こうした事態に備える仕組みです。
- 本人(あなた):将来、支援を受ける人(「委任者」)
- 任意後見人(受任者):あなたが選んだ、支援をしてくれる人
- 契約の方法:公証役場で、公正証書(公証人が作成する公的な契約書)にする
- 効力が生じる時期:判断能力が低下し、家庭裁判所が「任意後見監督人」(後見人が適切に仕事をしているかチェックする人)を選任したとき
ポイントは、契約しただけではすぐに始まらないことです。 元気なうちは、これまでどおり自分で財産を管理できます。準備だけを済ませておき、必要になった時点で効力が生じます。
「難しくないか?」という不安について
手続きの流れは、①相談 → ②契約内容の決定 → ③公証役場で公正証書を作成、の3段階が基本です。書類の原案作成は行政書士などの専門家に任せられるため、法律の知識がなくても進められます。契約時の公証役場の費用は、目安として合計2万円前後ですが、改正されることがあるため、契約前に公証役場や専門家へ確認してください。
任意後見と法定後見の違い(比較表)
結論:「後見人を自分で選べるか」が最大の違いです。 成年後見制度には、任意後見と法定後見の2種類があります。
法定後見は、すでに判断能力が低下した人のために、家庭裁判所が後見人を選ぶ制度です。任意後見は、まだ元気なうちに自分で後見人を決めておく制度です。
| 比較項目 | 任意後見 | 法定後見 |
|---|---|---|
| 利用できる時期 | 判断能力があるうちに契約 | 判断能力が低下したあとに申立て |
| 後見人を選ぶ人 | 本人(契約で指名) | 家庭裁判所 |
| 後見人の候補者 | 家族・友人・専門家・法人など自由 | 希望を出せるが、最終決定は家庭裁判所 |
| 任せる内容 | 契約で自由に決められる | 法律で定められた範囲が中心 |
| 契約の方法 | 公正証書(必須) | 家庭裁判所への申立て |
| 後見人による取消権※ | なし | あり(本人に不利な契約を後から取り消せる) |
| 後見人の監督 | 任意後見監督人 | 家庭裁判所(必要に応じて監督人) |
※取消権とは、本人が不利な契約(高額な訪問販売など)をしてしまった場合に、あとから取り消せる権利です。任意後見人には原則としてこの権利がありません。この点は、任意後見のデメリットとして押さえておきましょう。
「家庭裁判所が勝手に決めた人に任せることになるのでは?」という不安について
法定後見では、実際に、親族ではなく弁護士・司法書士などの専門職が選ばれる割合が高く、最高裁判所の統計では約8割にのぼります。本人や家族の希望どおりの人が選ばれるとは限りません。「信頼できる人に任せたい」という希望がある方は、判断能力があるうちに任意後見契約を結んでおくことをおすすめします。
こんな人は任意後見を検討すべき(ケース別チェック)
結論:次の3タイプに当てはまる方は、早めの検討をおすすめします。
厚生労働省の推計では、認知症の高齢者は2022年時点で約443万人、65歳以上の約8人に1人です。2040年には約584万人に増える見込みで、誰にとっても他人事ではありません。
① 子どもがいない・おひとりさまの方
具体例: 70歳のAさんは独身で、子どもも兄弟姉妹もいません。姪(めい)は遠方に住んでおり、負担をかけたくないと考えています。
何も準備しないまま認知症になると、施設の入所契約や入院時の手続きを頼める人がいません。任意後見契約を結んでおけば、信頼できる専門家に代理人になってもらえます。
こんな方は特に該当します:
- 配偶者と死別した、または独身で、頼れる親族がいない
- 親族はいるが疎遠、または高齢で頼りにくい
- 「家族に迷惑をかけたくない」と考えている
② 家族に負担や手間をかけたくない方
具体例: Bさんには子どもが2人いますが、共に仕事と育児で忙しく、介護や手続きの負担を減らしたいと考えています。
任意後見を使えば、面倒な手続きを専門家に任せられます。財産の使い方をあらかじめ契約に書いておくことで、子ども同士の意見の食い違いも防げます。
③ 高齢の親を持つ子世代の方
具体例: 65歳の母を持つCさん。「もし母が認知症になったら、実家の売却や施設の費用はどうなるのか」と心配しています。
重要な注意点:任意後見契約は、本人が自分で結ぶ必要があります。 子どもが親に代わって契約することはできません。親の判断能力が低下してからでは、契約自体ができなくなります。「まだ大丈夫」と思っているうちに話し合いを始めることが、最大のポイントです。
任意後見と他の制度(見守り契約・財産管理委任契約・死後事務委任契約・家族信託)の関係
結論:任意後見だけでは、カバーできない期間があります。 任意後見は非常に有効な制度ですが、これ1つで老後のすべてに備えられるわけではありません。
次の3つの「空白期間」を、他の制度で補うのが一般的です。
| 空白になりやすい場面 | 補う制度 | 内容 |
|---|---|---|
| 契約してから、判断能力が低下するまで | 見守り契約 | 定期的な連絡・面談で、本人の健康状態や判断能力を確認する |
| 判断能力はあるが、体が不自由で手続きが難しい時期 | 財産管理委任契約 | 銀行手続きなどを、判断能力があるうちから代行してもらう |
| 亡くなったあと | 死後事務委任契約・遺言書 | 葬儀、役所への届出、家財の処分、遺産の承継などを行ってもらう |
任意後見人は、本人が亡くなった時点で権限を失います。 葬儀や納骨、遺品整理などは任意後見人の仕事ではないため、おひとりさまの方は、死後事務委任契約もあわせて結んでおくと安心です。
なお、家族信託は、家族に財産管理を任せる制度です。不動産の管理や積極的な資産運用が必要な場合に選ばれますが、任意後見とは目的や使い方が異なります。どの組み合わせが合うかは、家族構成や財産の状況によって変わるため、専門家に相談しながら決めるのが確実です。
「任意後見だけで安心できる?」への答え
任意後見は「生きている間の、判断能力が低下した時期」に強い制度です。将来の不安に幅広く備えるなら、見守り契約・死後事務委任契約・遺言書とセットで考えることをおすすめします。
任意後見契約でできること・できないこと【内容を具体的に解説】
任意後見人ができるのは、「契約で定めた範囲の、財産管理と身上保護(生活・医療・介護に関する契約や手続き)」です。 一方で、医療行為への同意、身元保証人への就任、日常の介護そのもの、亡くなったあとの手続きなどは、任意後見人の仕事に含まれません。
「何でも任せられる」と思って契約すると、いざというときに「これは頼めなかった」となりかねません。この章では、任せられること・任せられないことの境界線を、具体例で整理します。
任意後見人に任せられること(財産管理・身上保護)
結論:任意後見人の仕事は、「財産管理」と「身上保護」の2つに大きく分かれます。 身上保護とは、本人の生活・医療・介護が適切に受けられるよう、契約や手続きを整えることです。
① 財産管理(お金・不動産まわりの手続き)
| 任せられる内容 | 具体例 |
|---|---|
| 預貯金の管理 | 銀行での入出金、口座の解約、通帳・印鑑の保管 |
| 収入の受け取り | 年金の受領、家賃収入の管理 |
| 支払い | 公共料金、税金、家賃、介護費用、医療費の支払い |
| 不動産の管理 | 自宅の修繕契約、賃貸借契約の管理、売却(下記※) |
| 各種手続き | 保険金の請求、役所への届出、確定申告の手続き |
※自宅など居住用の不動産を売却する場合は、任意後見監督人(後見人の仕事をチェックする人)の同意が必要になるのが一般的です。契約で、売却できる範囲をあらかじめ決めておくと安心です。
② 身上保護(生活・医療・介護に関する契約や手続き)
- 介護サービスの契約:要介護認定の申請、ケアマネジャーとの契約、訪問介護やデイサービスの利用契約
- 施設への入所契約:有料老人ホームや特別養護老人ホームなどの入所契約、費用の支払い
- 入院の手続き:入院契約の締結、入院費の支払い
- 医療費・介護費の管理:本人の口座からの支払い、領収書の管理
具体例: 72歳のAさん(独身・子どもなし)が任意後見契約を結んだ場合、認知症の診断後は、任意後見人が①預金から施設費用を支払い、②入所契約を結び、③年金を受け取って口座に入金する、といった一連の手続きを代行します。
ポイントは、任せられるのは「契約書(代理権目録)に書いたことだけ」という点です。 書かれていない事項は、後から任意後見人が自由に行うことはできません。
任意後見人にできないこと
結論:任意後見人は「代理で手続きをする人」であり、「本人の代わりに何でも決められる人」ではありません。 次の5つは、契約に書いても任せられない、または対象外となる代表例です。
| できないこと | 理由・補足 |
|---|---|
| 医療行為への同意 | 手術や延命治療の同意は、本人にしかできない性質のもの(一身専属権)とされているため |
| 身元保証人・連帯保証人への就任 | 任意後見人の権限に含まれず、施設や病院から求められた場合は別の手当てが必要 |
| 日常の介護・家事そのもの | 食事介助、入浴介助などの事実行為は、後見人の仕事ではない |
| 本人が亡くなった後の手続き | 任意後見は本人の死亡と同時に終了し、葬儀・納骨・遺品整理は対象外 |
| 本人の財産の積極的な運用・贈与 | 本人の生活を守るための管理が目的のため、投資や親族への贈与は原則できない |
特に注意したい2つのケース
① 入院・施設入所のときの「身元保証人」
病院や施設によっては、入院・入所時に身元保証人を求められることがあります。任意後見人はこの立場に就けないため、身元保証を引き受ける民間サービスの利用や、施設側との相談が必要です。おひとりさまの場合は、特に早めの確認をおすすめします。
② 亡くなった後の手続き
葬儀の手配、役所への死亡届以外の各種届出、家財の処分などは、任意後見人ではなく、死後事務委任契約(亡くなった後の手続きを頼む契約)で別途依頼しておく必要があります。任意後見契約とあわせて結んでおくのが一般的です。
契約内容(代理権の範囲)を決める際のポイント
結論:任意後見契約の「中身」は、代理権目録(任せる内容の一覧表)で決まります。 ここが曖昧だと、いざという時に動けません。
決めておくべき3つの項目
1. 代理権の範囲(何を任せるか)
契約書に添付する「代理権目録」に、任せる内容を具体的に書きます。
- 預貯金の管理・解約
- 年金・保険金の受領
- 不動産の管理・処分
- 介護サービス・施設入所の契約
- 医療・入院の契約手続き
- 税金・公共料金の支払い
- 上記に関する行政手続き
「広く書けば安心」とは限りません。 範囲が広すぎると、悪用のリスクが高まります。逆に狭すぎると、必要な手続きができなくなります。自分の財産状況・家族構成に合わせて、専門家と一緒に調整しましょう。
2. 報酬の定め(誰にいくら払うか)
- 家族が後見人になる場合:無報酬とする例も多い
- 行政書士などの専門家が後見人になる場合:毎月の報酬を契約で決める
- 任意後見監督人への報酬:家庭裁判所が決める(本人の財産から支払う)
報酬額は、契約書に明記しておくことが必須です。書かずに曖昧にすると、トラブルの元になります。
3. 任意後見監督人の役割を理解しておく
任意後見監督人は、後見人が契約どおりに仕事をしているかをチェックする人です。後見人は、定期的に監督人へ収支や財産の状況を報告します。
「後見人が勝手なことをしないか?」という不安への答え:
任意後見は、監督人が付く仕組みのため、使い込みなどの不正を防ぐチェック体制が制度に組み込まれています。それでも、後見人を誰にするか(信頼できる人か)が最も重要です。
任意後見が始まるタイミング(契約から発効までの流れ)
結論:任意後見は、契約しただけでは始まりません。 判断能力が低下したあと、家庭裁判所が監督人を選任した時点から効力が生じます。
発効までの流れ
- 判断能力が低下する:認知症などにより、財産管理や契約が難しくなる
- 申立ての準備:医師の診断書、契約書の写し、戸籍謄本などを用意する
- 家庭裁判所へ申立て:本人・配偶者・4親等内の親族・任意後見受任者(後見人になる予定の人)のいずれかが行う
- 任意後見監督人が選任される:家庭裁判所が、弁護士・司法書士などを選ぶ
- 任意後見が始まる:受任者が「任意後見人」として、契約に定めた仕事を開始する
「判断能力の低下は誰が気づく?」への答え
ここが任意後見の最大の落とし穴です。 本人が一人暮らしの場合、判断能力が低下しても、誰も気づかないまま放置されるおそれがあります。
対策として、次の契約を併用することをおすすめします。
- 見守り契約:定期的な連絡・訪問で、健康状態や判断能力の変化に気づいてもらう
- 財産管理委任契約:判断能力が低下する前から、手続きを代行してもらう
「契約したらすぐ始まる?」への答え:
始まりません。契約後、何年も何十年も効力が生じないまま終わる方もいます。それでも「備えておく」ことに意味があるのが、任意後見の特徴です。
任意後見を行政書士に依頼する費用相場【契約時・発効後・継続費用】
任意後見の費用は、「契約時(一度きり)」「発効後(毎月)」の2段階で考えるとわかりやすくなります。 契約時は公証役場の費用と行政書士への報酬を合わせておおむね10万円前後(目安)、発効後は財産の額や契約内容により月額数万円程度が続きます。
「結局いくら必要なのか」が見えないと、相談の一歩が踏み出せません。この章で、金額の全体像をつかんでください。なお、金額はすべて目安です。事務所や地域、契約内容で変わるため、必ず見積もりで確認してください。
契約時にかかる費用の内訳(公証役場の費用・行政書士報酬・その他実費)
結論:契約時の費用は「公証役場に払う実費」と「行政書士に払う報酬」の合計です。
① 公証役場に払う費用(ほぼ全国一律)
任意後見契約は公正証書(公証人が作成する公的な契約書)で結ぶ必要があります。費用は法令で決まっているため、どこの公証役場でも大きくは変わりません。
| 項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 公証人手数料 | 11,000円 |
| 法務局への登記嘱託手数料 | 1,400円 |
| 収入印紙代(登記用) | 2,600円 |
| 正本・謄本の交付手数料(用紙代) | 1枚250円程度(数枚分) |
| 合計 | 約1万5千円〜2万円 |
※公証人が自宅や病院に出張する場合は、日当や交通費が別途かかります。
※夫婦2人が同時に契約する場合など、契約の組み方で金額が変わることがあります。
② 行政書士への報酬
| 依頼内容 | 報酬の目安 |
|---|---|
| 任意後見契約書の原案作成・公証役場との調整 | 5万〜10万円程度 |
| 上記+見守り契約・財産管理委任契約のセット | 8万〜15万円程度 |
| 上記+死後事務委任契約・遺言書のセット | 20万〜50万円以上(内容により幅が大きい) |
具体例: 70歳のAさん(独身・子どもなし)が「任意後見契約だけ」を依頼する場合、行政書士報酬7万円+公証役場の費用約2万円=合計約9万円が一つの目安です。
行政書士報酬の相場と料金体系の見方
結論:見積もりは「総額」ではなく「何が含まれているか」で比べてください。 同じ8万円でも、含まれる内容は事務所ごとに違います。
見積もりを受け取ったら、次の6点を確認しましょう。
- 公証役場との日程調整・立会いは含まれているか
- 相談は何回まで無料か(初回のみ無料が多い)
- 公証役場の実費は報酬に含まれているか、別途か(別途が一般的)
- 戸籍謄本などの取得代行は含まれるか
- 契約後の見守り・定期連絡はあるか(あれば費用はいくらか)
- 追加費用が発生する条件は何か(内容変更、出張など)
「セット料金」は、必要なものだけを選べば割高になりません。 おひとりさまなら「任意後見+見守り+死後事務」は組み合わせる価値がありますが、すでに信頼できる家族がいる方は、任意後見契約のみで足りる場合もあります。
任意後見が始まってからの継続費用(後見人報酬・任意後見監督人報酬)
結論:発効後は、毎月「任意後見人への報酬」と「任意後見監督人への報酬」がかかります。 契約時より、こちらのほうが長期的な負担になります。
① 任意後見人(受任者)への報酬
金額は、契約で自由に決められます。 目安は次のとおりです。
| 誰が後見人になるか | 月額報酬の目安 |
|---|---|
| 家族・親族 | 無報酬とする例が多い |
| 行政書士などの専門家 | 月額2万〜5万円程度(財産の額や業務量による) |
② 任意後見監督人への報酬
金額は、家庭裁判所が決めます。 契約で決めることはできず、本人の財産から支払います。東京家庭裁判所が公表している目安では、次のとおりです。
| 管理する財産の額 | 月額報酬の目安 |
|---|---|
| 5,000万円以下 | 1万〜2万円 |
| 5,000万円超 | 2万5,000円〜3万円 |
具体例: 預貯金2,000万円のBさんの場合、専門家の後見人報酬(月3万円)+監督人報酬(月1万5千円)=月額約4万5千円、年間約54万円です。10年続けば、約540万円になります。
発効時にもまとまった費用がかかります
判断能力が低下して家庭裁判所に監督人選任を申し立てる際にも、次の費用が発生します。
- 申立手数料(収入印紙):800円
- 登記手数料:1,400円
- 郵便切手:数千円程度
- 医師の診断書:3,000〜1万円程度
注意: 家庭裁判所への申立書類の作成は、弁護士または司法書士の業務です。行政書士は代理して作成できないため、発効時に別の専門家へ依頼するか、本人・受任者が自分で作成することになります。この点は、契約前に依頼先へ確認してください。
「財産が少なくても大丈夫?」への答え
大丈夫です。 ただし、月額の報酬は本人の生活費から出ていきます。年金収入が月15万円のかたが、月4万5千円の報酬を払い続けるのは負担が大きいため、次の対策をおすすめします。
- 後見人を家族や信頼できる知人にして、無報酬にする
- 代理権の範囲を絞り、専門家の業務量を減らす
- 財産が少ない場合は、任意後見以外の制度(日常生活自立支援事業など)も検討する
費用を抑えるコツと、安すぎる依頼先の注意点
結論:「安さ」ではなく「費用の内訳の明確さ」で選ぶのが、失敗しないコツです。
費用を抑える4つのコツ
- 必要な契約だけに絞る:見守り・死後事務などを、本当に必要か検討してから組み合わせる
- 2〜3事務所で相見積もりを取る:初回相談が無料の事務所が多く、比べやすい
- 事前に情報を整理しておく:財産の概要、希望する後見人、任せたい内容をメモにしておくと、相談時間が短くなる
- 報酬は契約書に明記してもらう:後から「聞いていなかった」を防げる
こんな見積もりには注意
- 「一式◯万円」だけで、内訳の説明がない
- 相場(5万〜10万円程度)を大きく下回る、極端な低価格(別の名目で追加請求されるケースがあります)
- 必要性の説明なしに、複数の契約をすすめられる
- 契約を急がされる、その場での決断を迫られる
- 契約後のフォローや連絡体制について、説明がない
具体例: 「任意後見契約書作成、3万円」とうたう事務所に依頼したところ、後から公証役場との調整費・出張費・書類取得費が加算され、結果的に相場を超えたというケースも起こり得ます。見積書に「含まれるもの・含まれないもの」を書いてもらうことが、最大の防御策です。
行政書士に任意後見を依頼するとどこまでしてもらえる?他の専門家との違い
行政書士に任せられるのは、「任意後見契約の準備(契約書の原案作成と公証役場との調整)」と「任意後見人としての就任」です。 一方、家庭裁判所への申立書類の作成や、裁判所での代理、紛争になった場合の対応は、行政書士の業務範囲外です。
「誰に頼むのが自分に合うのか」で迷う方は多いため、この章で、各専門家の得意分野と選び方の基準を整理します。
行政書士が対応できる業務範囲
結論:行政書士は、契約前の準備から契約締結までを、費用を抑えながら一貫してサポートできる専門家です。 行政書士は、官公署に提出する書類や、権利義務・事実証明に関する書類の作成を専門とする国家資格者です。
行政書士に依頼できること
| 場面 | 依頼できる内容 |
|---|---|
| 契約前 | 制度の説明、家族構成・財産状況・希望のヒアリング、代理権目録(任せる内容の一覧表)の設計 |
| 契約時 | 任意後見契約書(公正証書)の原案作成、公証役場との日程調整・打ち合わせ、契約当日の立会い |
| 契約後 | 見守り契約(定期連絡・訪問)、財産管理委任契約、死後事務委任契約(亡くなった後の手続きを頼む契約)、遺言書作成のサポート |
| 発効後 | 行政書士自身が、任意後見人(受任者)に就任すること |
具体例: 68歳のAさん(独身・子どもなし)が行政書士に依頼する場合の流れです。
- 初回相談(60〜90分)で、財産の概要と不安な点を整理する
- 行政書士が契約書の原案と代理権目録を作成する
- 公証役場と調整し、公正証書で契約を結ぶ
- 契約後は、月1回の電話や年数回の面談で見守りを受ける
- 判断能力が低下したら、行政書士が任意後見人として業務を開始する
行政書士にできないこと(ここは要注意)
- 家庭裁判所への申立書類の作成:任意後見監督人選任の申立書などは、司法書士または弁護士の業務です
- 訴訟・調停などの代理:相続トラブルや、契約をめぐる紛争の代理は、弁護士の業務です
- 登記申請の代理:不動産の名義変更などは、司法書士の業務です
「行政書士に頼むと、発効時にまた別の専門家が必要になるのか?」という疑問について
判断能力が低下して申立てをする時点で、書類作成のみ司法書士や弁護士へ依頼する必要が生じる場合があります。契約前に、「発効時の申立てはどう進めるか(連携先の司法書士・弁護士がいるか)」を必ず確認してください。 ここを説明してくれる事務所は、実務に慣れている目安になります。
行政書士・司法書士・弁護士・社会福祉士の比較表
結論:迷ったら、「契約の準備が中心なら行政書士、書類作成から申立てまで一括なら司法書士、トラブルや相続争いの不安があるなら弁護士」が基本の選び方です。
| 比較項目 | 行政書士 | 司法書士 | 弁護士 | 社会福祉士 |
|---|---|---|---|---|
| 強み | 契約書作成、公証役場との調整、見守りや死後事務までの一括支援 | 家庭裁判所への申立書類作成、不動産登記、成年後見の実績が豊富 | 紛争対応、訴訟代理、相続争いへの備え | 福祉・介護の知識、施設や介護サービスの選定に強い |
| 契約書(公正証書)の原案作成 | ○ | ○ | ○ | △(事務所により対応) |
| 家庭裁判所の申立書類作成 | ×(できない) | ○ | ○ | × |
| 訴訟・紛争の代理 | × | △(簡易裁判所の一部のみ) | ○ | × |
| 任意後見人への就任 | ○ | ○ | ○ | ○(法人・団体に所属する場合など) |
| 契約時の費用感(目安) | 5万〜10万円程度 | 5万〜15万円程度 | 10万〜20万円程度 | 事務所により異なる |
| 向いている人 | 費用を抑え、見守り・死後事務まで一括で任せたい人 | 不動産があり、発効時の手続きまで見据える人 | 親族間の争いが予想される人 | 介護・福祉の視点を重視する人 |
※費用の目安は、前章の費用相場と同様、事務所により差があります。実際の金額は、見積もりで確認してください。
選ぶときの3つの判断基準
1. 財産や家族の状況が単純か、複雑か
- 預貯金と年金が中心で、親族間の争いの心配がない → 行政書士で十分対応できる場合が多い
- 不動産が複数ある、再婚や前妻の子がいるなど関係が複雑 → 司法書士・弁護士も含めて検討
2. 契約後の付き合いをどうしたいか
- 定期的に連絡や面談をしてほしい → 見守り契約を提供している事務所を選ぶ
- 契約だけ済ませたい → 契約書作成のみの依頼でも可能
3. 発効時の対応体制があるか
- 司法書士や弁護士と連携している事務所か
- 万が一、後見人が対応できなくなった場合の代替策があるか
親族・専門家・法人を後見人にする場合の違い
結論:後見人の候補は「家族・親族」「専門家個人」「法人」の3種類で、それぞれ長所と注意点があります。 頼める家族がいない方は、専門家か法人が現実的な選択肢になります。
| 候補 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 家族・親族 | 報酬を無報酬にできる、気持ちを理解してもらいやすい | 高齢の場合、後見人自身が先に判断能力を失うおそれがある。遠方で対応が難しい場合もある |
| 専門家個人(行政書士・司法書士・弁護士など) | 法律・事務手続きに慣れている、家族に負担をかけない | 月額報酬がかかる。専門家本人が病気・高齢で続けられなくなる可能性がある |
| 法人(士業法人・社会福祉法人・NPOなど) | 担当者が変わっても継続でき、長期間の付き合いに向く | 担当者と直接の信頼関係を築きにくい場合がある。法人の運営状況の確認が必要 |
「頼める人がいない場合はどうする?」
専門家か法人が、選択肢になります。 選ぶときは、次の2点を確認してください。
- 面談で人柄や説明のわかりやすさを確認する(1回で決めず、2〜3か所で比較する)
- 契約書に、報酬額と業務内容を明記してもらう
「相手が先に亡くなったら?」への備え
受任者(後見人になる人)が、本人より先に亡くなったり、高齢で務まなくなったりすると、契約が使えなくなります。この場合は、新たな契約を結び直す必要があります(判断能力が残っているうちに限ります)。
対策として、次の方法があります。
- 受任者を、本人より年下の人にする(専門家や法人を選ぶ理由の一つ)
- 複数人を受任者にする(1人で単独で行う、または共同で行うかを契約で決められる)
- 定期的に見守りを受け、状況の変化に早く気づく
任意後見契約の手続きの流れ【相談から契約・発効まで】
任意後見契約は、「相談 → 内容の決定 → 公正証書の作成 → 登記」の4段階で、最短1〜2か月ほどで結べます。 その後、判断能力が低下した時点で「家庭裁判所への申立て → 監督人の選任」を経て、はじめて効力が生じます。
「何から始めればいいのか」「どれくらい時間がかかるのか」がわからないと、最初の一歩が踏み出せません。この章では、相談から発効までの全体像を、時系列で整理します。
ステップ別の流れ(相談→内容決定→公正証書作成→登記→見守り→発効申立て)
結論:手続きは大きく「契約を結ぶ段階(本人が元気なうち)」と「効力を生じさせる段階(判断能力が低下したあと)」に分かれます。 前者は本人が主役、後者は受任者(後見人になる人)や家族が主役です。
【契約を結ぶ段階】
| ステップ | 内容 | 所要期間の目安 |
|---|---|---|
| ① 相談 | 行政書士などの専門家に、家族構成・財産・不安を伝える。制度や費用の説明を受ける | 初回60〜90分 |
| ② 内容の決定 | 誰を受任者にするか、何を任せるか(代理権目録)、報酬をいくらにするかを決める | 1〜3週間 |
| ③ 契約書の原案作成・公証役場との調整 | 専門家が原案を作成し、公証人と内容を確認する | 1〜2週間 |
| ④ 公正証書の作成(契約締結) | 公証役場で、本人と受任者が公証人の前で契約を結ぶ(所要30分〜1時間程度) | 1日 |
| ⑤ 登記 | 公証人が法務局へ登記を依頼する(本人が手続きする必要はありません) | 約2週間〜1か月 |
具体例: 68歳のAさん(独身・子どもなし)の場合、3月上旬に相談、3月下旬に内容を確定、4月中旬に公証役場で契約、5月上旬に登記完了、という流れで約2か月が目安になります。
契約後は、登記事項証明書(任意後見契約が登記されていることを証明する書類)を取得できます。受任者は、この書類で「任意後見人になる予定の人」であることを示せます。
【契約後〜発効までの期間】
⑥ 見守り(契約後、判断能力が低下するまで)
契約が済んだあとは、見守り契約で定期的に連絡・面談を受けます。月1回の電話や、年数回の訪問が一般的です。この期間は、数年から数十年続くこともあります。
【効力を生じさせる段階】
⑦ 発効申立て(判断能力が低下したとき)
本人の判断能力が低下したら、家庭裁判所へ「任意後見監督人選任の申立て」をします。家庭裁判所が監督人を選任した時点で、任意後見が始まります(詳細は後述)。
「どれくらい時間がかかる?」への答え
- 契約まで: 最短1〜2か月(内容の検討に時間をかけるほど長くなる)
- 発効まで: 申立てから選任まで、1〜2か月程度が一般的(地域や事案により差があります)
契約時に必要な書類と準備しておくこと
結論:必要書類は「本人と受任者の本人確認書類」が中心です。 事前にそろえておくと、当日がスムーズに進みます。
主な必要書類(公証役場の案内に基づく一般的な例)
| 対象 | 必要書類 |
|---|---|
| 本人 | 印鑑証明書(発行後3か月以内)、実印、戸籍謄本、住民票 |
| 受任者 | 印鑑証明書(発行後3か月以内)、実印、住民票(法人の場合は登記事項証明書と代表者の印鑑証明書) |
※実際の必要書類は、公証役場や契約内容により異なります。事前に、依頼先の専門家か公証役場へ確認してください。
相談前に整理しておくとよい5項目
- 家族構成:配偶者、子ども、兄弟姉妹、姪・甥の有無と、連絡の取りやすさ
- 財産の概要:預貯金の総額、不動産の有無、年金の月額(正確な金額でなくても構いません)
- 将来の希望:どこで暮らしたいか、施設に入りたいか、自宅で暮らしたいか
- 任せたい人の候補:家族、知人、専門家、法人のいずれか
- 気になる点:費用、後見人の選び方、家族への伝え方 など
ポイントは、完璧に準備しようとしなくてよいことです。メモ程度で構いません。整理しきれない部分は、相談の中で専門家と一緒に整理できます。
判断能力が低下したときの手続き(任意後見監督人選任の申立て)
結論:任意後見を始めるには、家庭裁判所への申立てが必要です。 申立てをしないままでは、契約があっても効力は生じません。
誰が申立てできる?
- 本人
- 配偶者
- 4親等内の親族(親、子、兄弟姉妹、おじ・おば、いとこなど)
- 任意後見受任者(後見人になる予定の人)
多くの場合、受任者が申立てを行います。 受任者が、本人の判断能力の低下に気づくことが前提のため、見守り契約が重要になります。
申立ての流れ
- 医師の診断書を取得する:本人の判断能力の状態を確認する
- 必要書類をそろえる:申立書、任意後見契約の公正証書の写し、登記事項証明書、戸籍謄本、財産目録など
- 家庭裁判所へ申立てをする:本人の住所地を管轄する家庭裁判所が窓口
- 家庭裁判所の調査・面接:本人の状況や受任者の適格性が確認される
- 任意後見監督人が選任される:弁護士や司法書士などが選ばれるのが一般的
- 任意後見が始まる:受任者が「任意後見人」として業務を開始する
注意: 申立書類の作成は、司法書士または弁護士の業務です(行政書士は作成できません)。契約前の相談時に、「発効時の申立てはどう進めるか」を確認しておくと安心です。
「その時になって、本当にスムーズに始まる?」への答え
準備しだいで、スムーズさは大きく変わります。 次の3点を整えておいてください。
- 受任者と、本人の状態を把握できる人が連絡を取り合える体制(見守り契約など)
- 契約書・登記事項証明書・診断書を出してもらえる医療機関を、あらかじめ確認しておくこと
- 申立て時の依頼先(司法書士・弁護士)の目星をつけておくこと
親の任意後見を考える子世代へ(親への切り出し方と同意の取り方)
結論:任意後見契約は、親本人が自分の意思で結ぶものです。 子どもが代わりに決めることはできません。「親に話したら嫌がられないか」という不安には、切り出し方の工夫で対応できます。
切り出し方の3つのコツ
1. 「老後の話」ではなく「自分たちの不安」として話す
- 悪い例:「お母さん、認知症になったらどうするの?」
- 良い例:「もしものときに、お母さんの希望どおりにしてあげたいから、どうしたいか聞かせてほしい」
2. 具体的なきっかけを使う
- 親の友人の入院・施設入所
- テレビや新聞での認知症・成年後見の話題
- 親自身が通帳・印鑑の管理に不安を口にしたとき
- お盆や正月など、家族がそろうタイミング
3. 一度で決めさせようとしない
1回目は「こういう制度がある」と伝えるだけで十分です。パンフレットや、専門家の無料相談の案内を渡し、親のペースで考えてもらいましょう。
同意を得るときに守りたいこと
- 判断能力があるうちに話す:認知症の診断後は、契約自体ができなくなる場合があります
- 子ども同士で事前に方針を共有する:兄弟姉妹が後から反対すると、親が混乱します
- 親の希望を最優先にする:「誰に任せたいか」「何を任せたくないか」は、親自身が決めます
- 専門家の面談に、親が主役として参加する:子どもが横から決めてしまうと、契約の有効性に疑問を持たれる原因にもなります
具体例: 70歳の母を持つCさんは、「お母さんの通帳のこと、私が全部勝手に決めるのは嫌だから、どうしたいか一緒に考えたい」と切り出しました。母は最初「まだ大丈夫」と話を避けましたが、2回目に専門家の無料相談へ同行し、約3か月後に契約を結びました。
任意後見でよくある失敗・トラブルと対策
任意後見のトラブルは、制度そのものより「契約の組み方」と「契約後の備え」の不足から起こります。 代表的な失敗は、①契約しても発効しない、②後見人との間で不正や認識のズレが起きる、③依頼先の選び方を誤る、の3つです。どれも、契約前に知っておけば防げます。
「契約したのに意味がなかった」「悪い人に当たったらどうしよう」という不安に、原因と対策をセットでお答えします。
契約したのに発効しない・使えないケース
結論:任意後見で最も多い失敗は、「契約はしたが、必要なときに誰も動けない」ことです。 契約しただけでは効力が生じず、家庭裁判所への申立てが必要なため、誰かが動かなければ始まりません。
発効しない代表的な4つの原因
| 原因 | 具体例(想定例) |
|---|---|
| 判断能力の低下に誰も気づかない | 一人暮らしのAさん(72歳)が物忘れで通帳を紛失し、光熱費が滞っても、受任者は年1回しか連絡しておらず気づけなかった |
| 受任者と連絡が取れない | 引っ越しや電話番号の変更で、受任者と本人が疎遠になった |
| 受任者が先に亡くなる・高齢で動けなくなる | 同世代の友人を受任者にしたが、本人より先に体調を崩して務まなくなった |
| 契約の存在を誰も知らない | 公正証書の保管場所を家族に伝えておらず、申立てのときに書類が見つからない |
対策:「気づく仕組み」と「動ける体制」をセットで作る
- 見守り契約を併用する:月1回の電話や、年数回の面談で、判断能力の変化に早く気づいてもらう
- 財産管理委任契約を併用する:判断能力があるうちから、通帳管理などを手伝ってもらう(体が不自由になったときにも使えます)
- 受任者を年下の人か、専門家・法人にする:受任者が先にいなくなるリスクを下げる
- 受任者を複数にする、または予備の候補を決めておく
- 契約書(公正証書)の保管場所と、契約の存在を、信頼できる人に伝えておく(エンディングノートに書くのも有効です)
知っておきたい「3つの契約類型」
| 類型 | 内容 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 将来型 | 任意後見契約のみを結び、判断能力が低下してから開始する | すでに信頼できる家族が近くにいる方 |
| 移行型 | 財産管理委任契約と任意後見契約を同時に結び、元気なうちは委任契約で支援を受け、判断能力が低下したら任意後見に移る | おひとりさまなど、気づいてくれる人が少ない方 |
| 即効型 | 契約直後に申立てをして、すぐ任意後見を始める | すでに判断能力が低下し始めているが、契約はできる方 |
おひとりさまの方は、移行型が選ばれることが多いのは、この「発効しない失敗」を避けやすいためです。
「契約時の判断能力」が後から争われるケース
認知症の疑いがある状態で契約すると、後から「契約時に判断能力がなかった」と親族に主張され、契約が無効になるおそれがあります。「まだ大丈夫」と先延ばしにせず、元気なうちに結ぶのが最善です。心配な場合は、契約前に医師の診断書をとっておくと、証拠になります。
後見人による使い込みや希望とのズレを防ぐには
結論:任意後見には監督の仕組みがあります。ただし、「監督人が付く前の期間」と「契約内容が曖昧な場合」にリスクが残ります。 後見人を誰にするかと、契約の書き方で、リスクは大きく減らせます。
監督の仕組み
- 任意後見が始まると、家庭裁判所が任意後見監督人を選任する
- 後見人は、監督人に定期的に収支や財産の状況を報告する
- 不正が見つかった場合、家庭裁判所は後見人を解任できる
リスクが残る場面と対策
① 移行型の「委任契約の期間」には、監督人がいない
移行型の場合、判断能力が低下して任意後見が始まるまで、財産管理委任契約の期間は家庭裁判所の監督が及びません。
- 対策:定期報告の義務(例:半年に1回、収支を書面で報告)を契約書に明記する
- 対策:見守り担当者と財産管理の担当者を分ける、または第三者にも報告する
- 対策:預かる財産の範囲や、1回に引き出せる金額の上限を決めておく
② 代理権目録が曖昧、または広すぎる
広く書きすぎると、悪用の余地が生まれます。逆に、狭すぎると必要なときに動けません。
- 対策:**不動産の売却や大きな支出は「監督人の同意が必要」**など、条件付きで任せる
- 対策:任せる内容は、預貯金、施設入所、医療費の支払いなど、必要最小限から始める
③ 本人の希望と後見人の判断がズレる
「最期まで自宅で暮らしたい」と思っていても、その希望を書き残していなければ、後見人が施設入所を選ぶこともあります。任意後見人には、本人の意思を尊重し、心身の状態や生活状況に配慮する義務があります。ただし、希望を伝えていなければ、尊重しようがありません。
- 対策:「付言事項」やライフプランメモとして、暮らし方・施設の希望・大切にしたい人間関係を書き残す(法的な強制力はなくても、後見人の判断の指針になります)
- 対策:受任者と年1回は話し合いの機会を持つ
④ 取消権がないため、悪質な契約から本人を守りにくい
任意後見人には、法定後見のような「取消権」(不利な契約を後から取り消す権利)がありません。高額な訪問販売などの被害に遭った場合、対応が難しくなります。
- 対策:見守り契約で、高額な契約を結ぶ前に相談してもらう
- 対策:契約書のクーリング・オフなどの手続きも代理権に含める
- 対策:それでも本人の不利益が大きいときは、法定後見への切り替えを検討する(家庭裁判所が特に必要と認める場合に限られます)
「悪い人に当たったらどうなる?」への答え
信頼できる人を選ぶことが、最大の対策です。 後見人の選び方は、次の3点で確認してください。
- 親族なら、本人と家族の利害が対立しないか(相続で揉めやすい関係ではないか)
- 専門家なら、所属する士業団体の会員か、実務経験は何年か
- 面談で、費用と業務内容の説明が具体的で、質問に誠実に答えるか
メリット・デメリットまとめ
結論:任意後見は「自分で選び、自分で決められる」ことが最大の強みです。一方、取消権がなく、契約後の備えが必要な制度でもあります。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 後見人を自分で選べる(家庭裁判所に決められない) | 契約しただけでは効力が生じない(申立てが必要) |
| 任せる内容を自分で決められる | 取消権がなく、悪質な契約から守る力は弱い |
| 家庭裁判所の監督人が付くので、不正を防ぎやすい | 監督人報酬が、月1万〜3万円程度かかる(発効後) |
| 元気なうちに、希望を反映した契約ができる | 死後の手続きは対象外(死後事務委任契約が別に必要) |
| 家族に負担をかけずに備えられる | 判断能力が低下してからは、契約できない |
具体例: 「子どもがおらず、頼れる親族もいない」方は、任意後見のメリットが大きくなります。「親族が多く、関係も良好」な方は、家族信託や法定後見のほうが合う場合もあります。メリット・デメリットは、家族構成や財産の状況で変わります。 複数の制度を比べたうえで選びましょう。
「結局、やる価値はある?」への答え
次の3つに当てはまるなら、任意後見を検討する価値は高いです。
- 頼れる家族が近くにいない、または家族に負担をかけたくない
- 誰に、何を任せるかを、自分で決めておきたい
- 認知症になったあとの生活や財産管理に、不安がある
行政書士選びで失敗しないチェックリスト
結論:「費用の安さ」より、「説明の具体性」と「発効後まで見据えた提案があるか」で選びます。 次の10項目のうち、8項目以上に「はい」と答えられる事務所を目安にしてください。
面談前に確認できる項目
- 行政書士登録をしている(日本行政書士会連合会の公式サイトで、登録の有無を検索できます)
- 成年後見・任意後見の取扱実績や、相談件数を公開している
- 料金表がウェブサイトに載っており、含まれる業務が書かれている
面談で確認する項目
- メリットだけでなく、デメリット(取消権がない、発効しないリスクなど)も説明してくれる
- 発効時に家庭裁判所へ申立てをするとき、誰が書類を作るのか説明がある(司法書士・弁護士との連携など)
- 見守り、財産管理、死後事務まで含めた提案がある(ただし、必要なものだけを選ばせてくれる)
- 見積書に、含まれるものと含まれないもの、追加費用の条件が書かれている
- 契約後の連絡頻度や、連絡が取れなくなった場合の対応が決まっている
- 専門家自身が高齢・病気などで続けられなくなった場合の対応(代わりの担当者、法人化など)を説明できる
- 質問に、専門用語を避けて答えてくれる。契約をせかさない
注意したい事務所の特徴
- 「行政書士が家庭裁判所への申立書類も作成します」と説明する:行政書士は作成できないため、誤った説明です
- 「一式◯万円」だけで、内訳を示さない
- その場での契約を強くすすめる
- 必要のない契約(遺言書、死後事務など)まで、すべてセットで売ろうとする
具体例: 2つの事務所で相見積もりをとったBさん(想定例)は、A事務所は「一式8万円」、B事務所は「契約書作成6万円+見守り月3,000円+発効時の連携先は司法書士」と詳細に説明されました。Bさんは、金額は近くても、内訳と発効時の流れが明確だったB事務所を選びました。
任意後見のよくある質問(FAQ)と、まず最初にやるべきこと
任意後見の最初の一歩は、「専門家の無料相談を1〜2か所で受けること」です。 契約を決める必要はありません。家族構成・財産・不安を10分ほどメモにまとめて相談すれば、自分に任意後見が必要か、どの契約が合うかが見えてきます。
この章では、検索でとくに多い疑問に答えたうえで、相談前の準備と最初の行動をまとめます。
よくある質問
Q1. 認知症になってからでも、任意後見契約は結べますか?
A. 原則として、結べません。 任意後見契約は、本人が契約の内容を理解し、自分の意思で結ぶ必要があります。認知症が進んで判断能力が不十分になると、契約自体が無効になるおそれがあります。
ただし、認知症と診断されても、軽度で契約の内容を理解できる場合は、結べる可能性があります。 判断は公証人が面談で行い、医師の診断書を求められることもあります。すでに判断能力が低下している場合は、家庭裁判所に申し立てる法定後見が選択肢になります。「まだ大丈夫」と先延ばしにせず、元気なうちに動くのが基本です。
Q2. 後見人は、あとから変更・解約できますか?
A. できます。ただし、手続きは時期によって異なります。
| 時期 | 解除の方法 |
|---|---|
| 発効前(監督人が選任される前) | 本人または受任者が、公証人の認証を受けた書面で、いつでも解除できる |
| 発効後(監督人が選任された後) | 正当な理由があり、家庭裁判所の許可を得た場合に限り解除できる |
発効後は、本人の保護のため、自由には解除できません。「この人に任せて大丈夫か」は、契約前に時間をかけて確かめてください。 後見人が不正や任務の懈怠(けたい:怠ること)をした場合は、家庭裁判所が解任できます。
Q3. 財産が少なくても、任意後見は必要ですか?
A. 財産の額だけでは決まりません。 預貯金が数百万円でも、施設入所の契約、年金の管理、公共料金の支払いなどは、判断能力が低下すると困ります。
ただし、毎月の後見人報酬や監督人報酬は本人の財産から支払うため、収入が少ないと負担になります。その場合は、次の方法を検討してください。
- 後見人を家族や信頼できる知人にして、無報酬にする
- 代理権の範囲を絞り、専門家の業務量を減らす
- 市区町村の社会福祉協議会が行う日常生活自立支援事業(福祉サービスの利用手続きや金銭管理の支援)など、費用の低い制度を確認する
Q4. 契約したあとに、内容を見直せますか?
A. 見直せます。 判断能力があるうちなら、代理権の範囲を追加したい場合、報酬を変えたい場合、受任者を替えたい場合などは、契約の変更や、新たな契約の締結で対応できます。
ただし、変更する場合も、公正証書で行う必要があります。費用もかかるため、2〜3年に1回は、家族構成や財産の変化を確認する習慣をおすすめします。引っ越し、病気、家族の死亡、財産の増減があったときが見直しの目安です。
Q5. 費用は誰が払いますか?
A. 契約時の費用は本人が負担し、発効後の報酬は本人の財産から支払われます。
- 契約時(公証役場の費用+行政書士報酬):本人が負担(目安は合計10万円前後。詳細は費用の章をご覧ください)
- 発効後の後見人報酬:本人の財産から支払う(契約で定めた額)
- 監督人報酬:本人の財産から支払う(家庭裁判所が決定)
親の任意後見を考える子世代の方も、費用を子どもが負担するかは、家族で話し合って決めます。本人の財産を、本人のために使うことが原則です。
Q6. 任意後見と遺言書は、どちらが先ですか?
A. 目的が違うため、両方が必要になる方が多いです。
- 任意後見:生きている間の、判断能力が低下したあとの支援
- 遺言書:亡くなった後の財産の分け方
おひとりさまの場合は、任意後見+死後事務委任契約+遺言書の3つをセットで検討すると、生前から死後まで切れ目なく備えられます。
Q7. 家族に内緒で契約できますか?
A. 契約自体は、本人の意思で結べます。ただし、家族には伝えておくことを強くおすすめします。 家族が契約の存在を知らないと、判断能力が低下したときに申立てが遅れたり、あとから「知らなかった」と親族間のトラブルになったりします。
家族に伝える内容は、次の3点で十分です。
- 任意後見契約を結んだこと
- 誰が受任者か
- 公正証書や登記事項証明書の保管場所
まず何から始めるか(無料相談の活用と準備リスト)
結論:最初にやることは、「情報を整理して、専門家に1〜2か所相談する」ことです。 相談は、契約を決める場ではありません。相談するだけで構わないので、安心して問い合わせてください。
ステップ1:不安を書き出す(10分)
次の質問に、メモで答えます。
- 将来、何がいちばん不安か(お金、住まい、介護、亡くなった後など)
- 頼れる家族や友人はいるか
- 家族には、何を負担させたくないか
ステップ2:家族構成と財産の概要を整理する(15分)
| 整理する項目 | メモの例 |
|---|---|
| 家族構成 | 配偶者なし、子どもなし、姪が1人(遠方) |
| 預貯金 | 合計で約1,500万円 |
| 不動産 | 自宅(持ち家)1軒 |
| 年金・収入 | 年金が月15万円ほど |
| 任せたい人の候補 | 決まっていない/友人の○○さん/専門家に任せたい |
正確な金額でなくて構いません。 概算で十分です。
ステップ3:希望する暮らしを考える(10分)
- 最期まで自宅で暮らしたいか、施設に入りたいか
- 医療や介護で、大切にしたいことは何か
- 亡くなったあとの葬儀や、家の片づけをどうしたいか
ステップ4:専門家に相談する(1〜2か所)
- 無料相談を行っている事務所を、2〜3か所リストアップする
- 1〜2か所で相談し、説明のわかりやすさ、費用の内訳、発効後の対応を比べる
- 相談後、その日に契約する必要はありません。持ち帰って、家族とも話し合って決めてください
相談時に聞いておきたい5つの質問
- 私の場合、任意後見だけで足りますか? 他に必要な契約はありますか?
- 総額はいくらで、何が含まれますか? 追加費用はありますか?
- 発効時の家庭裁判所への申立ては、どのように進めますか?
- 契約後の見守りや連絡は、どのくらいの頻度で行いますか?
- あなた(事務所)に万が一のことがあったときは、どうなりますか?
「相談だけで、勧誘されないか」が不安な方へ: 契約をせかしたり、その場での決断を迫ったりする事務所は避けてください。こちらの質問に、具体的に、誠実に答えてくれるかが判断の目安です。
まとめ
任意後見は、「判断能力があるうちに、自分の将来の代理人を、自分で決めておく契約」です。 本記事のポイントを、次の5点に整理します。
- 内容:任せられるのは、財産管理と身上保護(介護・施設・入院の契約手続きなど)。医療行為への同意、身元保証人、死後の手続きは対象外
- 費用:契約時は、公証役場の実費(約1万5千〜2万円)と行政書士報酬(5万〜10万円程度)で、合計10万円前後が目安。発効後は、後見人報酬と監督人報酬が月額でかかる
- 依頼先:行政書士は、契約書作成から見守り・死後事務まで支援できる。家庭裁判所への申立書類の作成は、司法書士・弁護士の業務
- 注意点:契約しただけでは始まらない。見守り契約などで、判断能力の低下に気づく仕組みが必要
- 時期:契約は、元気なうちに。認知症が進んでからでは結べない
今日できる最初の行動は、次の3つです。
- この記事を読み返し、「自分に必要な契約」に印をつける
- 家族構成と財産の概要を、メモに書き出す(約15分)
- 無料相談を行っている専門家に、1件だけ問い合わせる
「何から始めればいいかわからない」という方は、ぜひ一度、無料相談をご利用ください。状況の整理だけでも、将来の不安は大きく軽くなります。

